【IoT用語集】スマートグリッドとは?

はじめに

スマートグリッドとは、電力供給と電力消費の調節機能を備えた、発電・送電を行う電力網のことをいいます。通信と制御機能を持つ機器を要素の一部として、電力供給を電力需要に応じて効率的に行うことができるため、電力消費を最適化することができます。このため、省エネルギーに資する・災害対策に資するなどの効用が認められます。
スマートグリッドにおいては、通信回線を電力供給者と電力消費者の間に置き、どこで電力需要があるのか、どこで供給可能か、センサーで識別・メーターで量を計測し、これに応じた発電・送電を行います。もともとは、電力供給が不安定な米国において1970年代にすでにコンセプトが成立しており、このコンセプトを実現することが長らく技術的課題でした。インターネットの発達や、太陽光・風力による発電などの電力買取などの発達を経て、2000年代に入ると、スマートグリッド構想は実現が可能な構想として認識されるようになりました。
2010年代に入ると、各国とも官民一体でスマートグリッド計画を進めると同時に、金融機関による大規模資金調達も行われるようになってきています。東日本大震災を経験した日本においては、近年では災害時の緊急電力需要にも対応することが意識され、スマートグリッドは経済産業省主導により、計画・実証実験が行われているところです。

スマートグリッドの構成要素

スマートグリッドは発電装置・送電装置・電力消費をする家庭や事業所・これらを結ぶ通信回線・そして、各ノードに発電量・送電量・電力消費量を計測する計器が必要になります。計器のなかでも、家庭や事業所あるいは地域内の電力消費量を計測・記録する「スマートメーター」が、スマートグリッドのなかでもキーデバイスとなっています。
スマートメーターは、電力消費を最適化するために電力消費量の記録を時間も同時に計測してサーバに送ります。サーバにて蓄積された記録は、分析のうえ発電・送電事業者にフィードバックされます。電力消費量を最適化する仕組みはこれらの要素により実現されています。
スマートグリッドは、BEMS(ビルエネルギーマネジメントシステム)・HEMSホームエネルギーマネジメントシステム)といったシステムを備えたスマートビルディング・スマートホームと発電・送電設備をつないでいるとも言い換えることもできます。

スマートグリッドの効用

スマートグリッドは、構想が実現されると次のような効果が期待できるとされています。

  • 省エネルギーおよび電力消費量の減少を図ることによる温室効果ガスの削減
  • 電気自動車や、交通システムに対する電力供給の安定化・効率化
  • 災害時の電力供給の適切な制御(病院・交通信号・災害用設備等に対する優先供給)
  • 太陽光発電・風力発電などの供給の安定化
  • ピーク時電力消費の削減とオフピーク時の効率的電力利用

その他、スマートグリッドは巨額の公共投資を呼び込むことができるため、景気刺激策にも資することが指摘されています。

逆潮流

逆潮流とは、スマートグリッドが事業所や家庭を発電元とした場合の通常とは逆向きのエネルギー・情報の流れのことをいいます。太陽光発電・風力発電については、余剰電力を電力事業者が買い取ることができますが、買い取る電力量の計測および蓄電設備の余力確認や送電経路の確認などについて、スマートグリッドにより適切に実行することができるようになります。逆潮流がすすめられると、自然エネルギーの利用が促進される効果も生じてきます。

標準化について

スマートグリッドの技術の中でも、通信規格は標準化が進められています。IEEE2030は、2011年にスマートグリッド間の相互運用を可能にするため、標準化が完了したものです。また、BEMSについては、IEEE1888が通信規格として標準化され、HEMSについては、ECONET Liteが標準規格となっています。

各国の状況

  • ヨーロッパ
    ABBグループがスマートグリッド・スマートメータの領域での特許数が世界一になっています。すでに電力料金の収受を確実化するために、英国やイタリアなどで、スマートメーターの実用化が2000年代から進んでいます。

  • 米国
    送電の不安定さから、2003年に起きた大停電を教訓に、国家プロジェクトとして送電網の整備が進められ、スマートグリッドはその整備計画の一部として位置づけられています。オバマ政権下での景気刺激策としても、110億ドルの国家予算からの拠出がありました。現在全米42州で、スマートメーターへの何らかの取り組みが行われています。

  • 日本
    すでに日本はBEMS先進国の一つとなっていますが、そのほかにも地域単位の実証実験が多数進められているほか、メキシコNEDO新エネルギー・産業技術総合開発機構)による支援事業の一環として、スマートグリッドを用いた送電網の整備技術を輸出するなど、途上国向けの事業展開も進めているところです。

まとめ

スマートグリッドは、電力消費量を個々の事業体・家庭で節約する、というミクロの視点から、全体を把握し、最適化することにより省エネを実現するというより大きな視点からのアプローチであるため、省エネのパラダイムシフトである、と言われています。省エネのほかにも、自然エネルギーとの組み合わせやスマートメーターの普及で、今後の個人の生活を変えるような電力サービスを実現する可能性もあります。今後に期待ができる技術といえるでしょう。

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