【CEATEC JAPAN 2017 海外企業】Senseye Ltd

CEATEC_Senseye01
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機械学習で工場のダウンタイム削減

工場の設備や機械には耐用年数があります。耐用年数を過ぎて劣化した機械を運転し続けると、不測の事故を引き起こすことが少なくありません。したがって、予測保全が必要です。

設置された機械を監視し、正常状態とは異なった振動や温度などを検知することで、故障や損壊の予兆を知ることができます。かつては熟練した職人が判断していた予測は、予測保全プログラムによって行われるようになりました。

Senseye Ltdは、この予測保全プログラムを既に実装している企業向けに、工場の機械や設備の故障を予測し、残りの寿命を判定するなどメンテナンスに特化したアプリケーションソフトウェア「Senseye」を提供しています。2014年にイギリスで設立。経営幹部の中には航空業界で20年以上勤務していた経歴のある人物も参画し、予測保全を最重視している企業です。

Senseyeを導入することで、不測の事態による機械のダウンタイムを削減し、総合設備効率(OEE: Overall Equipment Effectiveness)と呼ばれる設備の生産効率の指標を最大化します。

異常や劣化の予測には、各設備に取り付けられたIoTデバイスなどから収集した情報をクラウド上に蓄積して、人工知能の技術のひとつ機械学習(マシンラーニング)を用いて分析します。

技術者が手動でメンテナンスする場合は専門知識が必要になりますが、障害を自動的に予測できるため、コスト削減が可能になります。クラウドベースであることからインストールの手間をかけることもなく、導入時に新たにデバイスを設置する必要もありません。

共同・創設者、COOであるAlexander Hill氏のお話をうかがいました。

40年以上蓄積されたデータを活用した予測技術

Senseyeはクラウド上で運用されるため、拡張性にも優れています。監視する設備を柔軟に増減できることから、既に保全システムを導入している企業であれば、大企業や中堅企業など規模を問いません。

人工知能によって機械の寿命を予測する場合、セマンティック・アノテーション、機械学習(マシンラーニング)、統計学的分析、マシン・オントロジーなど複雑な技術が必要になります。しかし、Senseyeでは設備や機械の故障や理解について、40年以上にわたる時間をかけて収集したビッグデータを活用するため、ゼロベースからの構築は不要です。

機械工学の知識と多様な劣化モデルを活用したデータから機械学習のアルゴリズムを導き出します。基盤となるデータから、さらに現場の設備のデータを学習して、異常の検知や耐用年数などの予測を迅速かつ正確に把握できます。

Alexander Hill氏は、データがない場合にも運用できることを付け加えました。

「データがない場合は、機械の運転を止めることなく14日間をかけて通常の運転中にバックグラウンドで通常運転の情報を収集し、機械学習を行います。この通常運転の学習後、自動的に監視と予測ができるようになります」

監視状態においては、学習した通常運転とは異なるデータが発生した場合に警告を出します。この警告によって、メンテナンスが必要か不要かという情報をフィードバックし、さらに学習を重ねる仕組みです。運用を持続すればするほどシステムの学習度が高まり、誤った検出が減少します。

ダウンタイム30~50%削減などの実績

Senseyeは設備を自動的に監視し、機械の停止時期、メンテナンスが必要な時期、部品などの交換が必要な時期などの情報を、毎日あるいは1週間ごとに可視化します。メンテナンス要員を配備する必要がないため、人的コストの低減という側面でも利用価値があります。

重要な機能としては、設備が停止するまでの残りの寿命(RUL:Remaining Useful life)に関する情報を解析できることです。したがって、工場はリプレースなどが必要な設備の優先順位の検討が可能になります。

監視中の状況は、PCだけでなくタブレットやスマートフォンからも確認できます。メールでアラートを発信することも可能です。

「特定の領域に関わらず製造業の全般で導入されていますが、特に自動車、風力発電などの領域で導入実績があります」とAlexander Hill氏。そして次のような効果が実際にもたらされたそうです。

  • メンテンナンス費用の10~40%削減
  • ダウンタイムの30~50%の削減
  • 生産性の45~55%の向上
  • メンテナンスの正確性が85%向上

セキュリティも重視しています。銀行の取引のシステムと同レベルの手法で、クラウド上のデータの安全性を確保します。

ジャパン・クオリティに注目

Senseyeの開発で製造業に特化した理由についてAlexander Hill氏は次のように語ります。

「製造業には大量のデータがあります。このデータをさらに活用することが、Senseyeを開発した第一の目的でした。われわれの技術が貢献できる分野は、工場のダウンタイム削減であると確信しました。それが製造業向けのアプリケーション開発に着手した理由です」

日本進出にあたっては、既に日本のいくつかの大企業のイギリス工場で導入実績がありました。そこで日本は製造業に強いイメージがあり「高品質、自動化、効率化を重視していること」に注目していたそうです。今回のCEATECに出展したことで手応えもありました。

「初めての出展にも関わらず、特に大手の製造業のみなさまには真剣に耳を傾けていただける方が多く、イベントへの出展は効果があったと受け止めています」

これからも積極的に日本のイベントに参加して、導入企業を開拓していきたい意向があるとのこと。「現在メインとなる実績は製造業が中心ですが、エネルギー関連の分野にも進出していきたい」と今後の事業展開にも積極的です。

最近、日本の製造業界では、ジャパン・クオリティを揺るがすような大企業の問題が次々と明らかになっています。国内だけにとどまらず日本の部品を使った海外企業にまで、その影響が懸念されるようになりました。

世界から信頼を取り戻すためにも、劣化した設備を運用したり、品質管理を怠ったりすることがないように留意しなければなりません。

人手が足りない部分は技術で補うなど、日本が得意な「カイゼン」が求められているのではないでしょうか。そして、世界には日本のモノづくりを現在も評価し、日本の製造業に向けたIoTの導入を積極的に支えていく企業があることを、しっかりと受け止める必要があります。

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