付加価値の高い経済に向けて - 中国の製薬・ヘルスケア産業

付加価値の高い経済に向けて - 中国の製薬・ヘルスケア産業 – 記事

中国は世界第2位の製薬業界の市場です。急成長を遂げている中流階級と急激に進む高齢化社会が製薬への需要を伸ばしています。
世界の製造大国である中国は、より付加価値の高い経済へと移行しつつあり、この中国がメーカーとしても消費者としても優位を占める可能性がある1つの主要産業が、ヘルスケア分野です。

ヘルスケア部門の情報提供を行うIQVIAによれば、中国は2017年、1,226憶ドルの規模を持つ、世界第2位の国内医薬品市場でした。加えて2022年までに1,450憶ドルから1,750憶ドルに達する成長が期待される最大の新興国でもあるのです。参考までに、世界最大のヘルスケア消費大国のアメリカの2017年の医薬品の消費規模は4,666憶ドル、日本は848憶ドルでした。ヘルスケア全体を対象とした場合、中国での消費は5,740憶ドルに対してアメリカは3兆ドルを記録しています。

中国のヘルスケア産業は、未だ黎明期でこれはGDPに占めるヘルスケアへの出費が、特に60歳以上で低いことでも明らかです。この数字は、人口が高齢化するにつれて医薬品の需要が増えることから、ヘルスケア業界に成長の余地が十分にあるという証明になります。2015年の統計では中国では、人口の73%が15歳から64歳の間にあり、これは今後高齢人口の比重が増すことを示唆しています。(同年、アメリカでは66%が同じ年齢層にあり、日本ではこの割合は60%となります)
2010年には24%の成長率を見せていたヘルスケア分野は2017年には11%の成長率へと鈍化していますが、専門家によれば成長の余地はまだある、ということです。

Made in China 2025における医薬品・ヘルスケアの位置づけ

習近平国家主席が推進するMade in China 2025において、製薬産業は重点項目の一つに位置付けられています。そこで重視されているのが、イノベーションと自国でのR&Dです。
中国はすでにジェネリック医薬品の分野の開拓に着手しており、2016年にはアメリカ食品医薬品局から22のジェネリック医薬品の承認を受け、その数は2017年には38に増加しています。

2020年までには、中国のヘルスケアへの出費はトータルGDPの6.5%から7%(約1兆ドル)に達すると予測されています。2016年10月の国務院の発表によれば、2030年までにはその規模は2兆ドルに達するとみられています。これは中国のすべてのヘルスケア部門(医薬品からメディカル・デバイスまで)にさらなる成長機会があるということです。

この成長目標を達成するために、中国政府は様々な方策を採用しています。
国内向けの対策としては、医薬品の流通機構を整理し、価格を軽減し、汚職を防ぐために一つの医薬品に対して生産者と一か所の中間業者のみを認めるTwo invoice systemを採用しました。これにより、従来は幾重もの中間業者を介していた医薬品の流通システムをシンプル化し、中間手数料の軽減を図りました。

中国共産党中央委員会と国務院は、レビューと承認制度の改革を促進し、医薬品及び医療機器の革新を奨励する意見を共同で発表し、これは2017年10月8日に発効しました。
この意見書は、臨床試験管理の見直し、医薬品および医療機器の承認プロセスの加速、医薬品の革新と後発医薬品の開発の促進、製品のライフサイクル全体にわたる医薬品および医療機器の管理の強化など、いくつかの主な目的を提示しています。
この意見書の発表に続き、中国食品医薬品局(CFDA)は輸入医薬品の登録を調整する決定を発表し、フェーズI臨床試験を中国で実施することを許可しました。

国務院総局は、2017年5月には広範なプライベート・ヘルスケア・サービスの開発に関する意見書を発表し、個人投資機関がメディカル・サービス・セクターに参画することを奨励しました。この意見書では、要件を満たした私立のヘルスケア施設は、公立の医療機関と同等に扱われることも保証しています。
先端医療技術やマネジメント・スキル及び業界屈指のオペレーション・モデルなどを有する外国投資機関は、地元企業とジョイントベンチャーを形成することで、医療施設を設立することを奨励されています。

Credit Suisse(クレディ・スイス)が注目する中国のヘルスケア企業

スイスに本拠を置く、世界最大規模の金融コングロマリットであるCredit Suisseは、自社が注目するいくつかの中国のヘルスケア企業を紹介しています。

1. Sino Biopharm(中国生物製薬有限公司)

2000年に設立された同社は、積極的なR&D、生産及びセールス活動を通じて中国の製薬産業のリーダーとなりました。製薬事業のみならず、医療やヘルスケア全般で企業活動を行っています。
同社は、肺がん治療薬、Anlotinib(アンロチニブ)と、B型肝炎治療薬Tenofovir(テノホビル)の2種類の治療薬で売り上げを飛躍的に伸ばし、これ以外にも2021年までに承認を得ようとしているいくつかのジェネリック医薬品を取り扱っています。
同社の製品は中国の肝炎市場で2016年には22%のマーケットシェアを確立していました。更に現在では、肝疾患治療薬市場の24%のシェアを得ています。2016年には11%の市場シェアを持っていた抗がん剤の分野では、2020年までに19%までシェアを伸ばす予測を立てています。

2. Jiangsu Hengrui Medicine(恒瑞製薬)

1970年創立のJiangsu Hengrui Medicineは、全世界で17,000人以上の従業員を抱える、抗悪性腫瘍薬、外科用薬品、造影剤分野での中国最大のメーカーです。
2018年の営業利益は、24憶ドルに上り、同社のすべてのAPI及びFDFsはGMP認証に合格しています。これらは、アメリカ食品医薬品局及び医薬品医療機器総合機構などからも認証を受けています。

3. CSPC Pharmaceutical(石薬集団有限公司)

CSPCは活性医薬成分(API)および製剤の両方を取り扱う製薬会社で、ペニシリン、合成ビタミン、カフェイン、抗生物質、ブチルフタリド(NBP)など、1000種類に近い薬品を生産しています。
中国の製薬業界で第2位の地位にあり、輸出量においては3億ドルで第1位となっています。

米中貿易摩擦では、中国が国内で事業活動を行うためには、外国企業に中国企業とのジョイントベンチャーを義務付け、これが企業機密の中国への漏えいをもたらすことが大きな論点の一つとなっています。中国の製薬・ヘルスケア業界の成長の行方も、米中貿易交渉に大きく左右されるとみられています。

≪参考資料≫
https://www.cnbc.com/2018/04/19/chinas-pharmaceutical-industry-is-poised-for-major-growth.html
https://www.emergobyul.com/resources/market-china
https://www.china-briefing.com/news/healthcare-reforms-underscore-market-growth-china/
http://www.sinobiopharm.com/
https://www.cspc.com.hk/en/global/home.php

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