製造ロジスティックス分野でのIndustry 4.0ケーススタディ

製造ロジスティックス分野でのIndustry 4.0ケーススタディ – 記事

Industry 4.0は、産業型生産分野に破壊的な変革を引き起こすだろうと言われています。これは、急速な技術開発と、製造会社が高額な人件費からの脱却の必要性によって動機づけられています。Industry 4.0は、製造ロジスティックス、ビジネスモデル、製品やサービスなど、産業型生産の多くの側面にも関連付けられています。
Industry 4.0のアプリケーションは、様々な場所で解説されていますが、異なる運用環境の中でのアプリケーションの適合性は、明らかでない場合もあります。

今回は、ノルウェーで活動する製造業数社を対象に実施された、製造ロジスティックス分野でのケーススタディを紹介します。

ケーススタディの概要

このケーススタディで、実証を試みたのは

  1. 製造ロジスティックス分野におけるカギとなるIndustry 4.0のアプリケーションは、何か?
  2. これらの技術の適用性は生産環境によってどのように影響を受けるか?

の2点です。
これに先立ち、ケーススタディでは、Industry 4.0をその統合の在り方から3つのフィーチャーに分類します。これらは:(1)垂直型の統合、(2)水平型の統合、そして(3)バリューチェーンのすべてをカバーするエンドートゥーエンド型の統合です。
また、このケーススタディでIndustry 4.0のコンポーネントとして認識されるたのが:(1)サイバー・フィジカル・システム(CPS)、(2)IoT、(3)スマートファクトリーです。

製造ロジスティックス分野で特に役立つと思われるIndustry 4.0のテクノロジーには;

  • 意思決定支援 - AI、ビッグデータ解析、拡張及び仮想現実
  • 認証及び相互接続性 - センサー、オートID、ネットワーキング・テクノロジー
  • 円滑な情報フロー - リアルタイム・コントロール、ITシステムの統合、クラウド・コンピューティング
  • 自動化とロボティック - 産業型ロボット、3Dプリンティング、自動運転車両

などがあげられます。

ケーススタディを実施するにあたり、調査グループは、内部での資材の流れと及び製造ロジスティックスのパフォーマンス改善することを目標に掲げている企業の中から、ノルウェーの製造業の状況や環境を正しく反映する対象企業を選択し、(1)各対象企業の生産環境のマッピング及び(2)フォーカスグループへの調査を実行しました。

ケーススタディ1. Kleven Maritime AS(ケルヴェン・マリタイムAS)

Klevenは1944年創業の造船会社です。ノルウェー西岸に2つの造船施設を持ち、プラットフォーム供給船、建設船、耐震船、およびアンカー処理船などを作っています。同社の造船システムはETOプロダクションと呼ばれ、設計やエンジニアリングに関しては、顧客との綿密な協力によって行われる、高度にカスタマイズされたものです。
Klevenが重点を置いているのが、生産効率を高めるためのモジュラー方式の採用です。すべての船舶に共通する部分をモジュラー方式で製造し、完成までにかかる期間縮小を試みようということです。
Klevenによって製造される船舶は、製品構造の複雑さが高い為、通常完成までに数か月から長いものでは2年かかるものもあります。その為、Klevenが一年間に納品できる船舶数がかなり少ないのが課題となっています。同社の製造工程は、かなりロボットの導入が進んではいますが、まだまだ人の手に頼る部分が殆どです。
今回の調査で明らかになったのは、同社にとっては仕掛品や在庫を減らすことは特に重要ではなく、材料の流れを改善し、計画と管理の為により良い方法と原則を適用することはいくらか重要だと認識している、ということでした。

ケーススタディ2. Brunvoll(ブルンヴォル)

Brunvollは1912年創業で、船舶のプロパルジョン、ポジショニング及び操縦システムのトータルソリューション(設計・製造・販売・サービス)を提供しています。同社が提供する製品・サービスの性格上、同社の製造工程は造船会社と密接に関連しています。
現段階で、BrunvollはIndustry 4.0は現実的なゴールだとは捉えていますが、Industry 4.0が同社にもたらす機会については、それほど深く研究してはいません。
同社の製造ロジスティクスに関連する最も重要な焦点は、原料の流れを改善し、処理時間と原材料および完成品の在庫を減らすことです。生産計画と管理方法及び原則を改善することがこの焦点の一部となります。IT利用頻度の増加とITソリューションの統合もある程度は課題として捉えていますが、製品とコンポーネントの標準化はそれほど重要ではないと考えられていることが分かりました。

ケーススタディ3.Ekornes(エコネス)

Ekornesは高級リクライニング・チェアで有名な、1934年創業の家具メーカーです。
同社は、中流から高級家具製品メーカーに位置付けられていますが、ホームファニチャー分野でノルウェー国内のみならず、国際的にもリーディング・カンパニーとなることを目指しています。同社の家具は、使用素材や色などのカスタマイズに力を入れています。
Ekornesは、Industry 4.0を実現可能なゴールだと考え、同社にとって成長機会を与えてくれるものだと捉えています。しかし、現状では限られた分野における可能性と機会を追及しているにすぎません。インダストリー4.0が大幅に会社の製造物流を改善するだろう、と回答しており、資材のフロー効率を改善することが、同社の主な焦点となっています。

ケーススタディ4. Pipelife(パイプライフ)

オーストリアに本社を持つ、ヨーロッパ最大規模のプラスチック製パイプの製造メーカーであるPipelifeは、MTS生産戦略をとっており、高度に標準化されたパイプを大量に繰返生産しています。同社は、プラスチックパイプの大量生産による規模の経済を通じたコスト優位性を目指しており、生産は非常に自動化された製品ラインの製造現場レイアウトで編成され、切り替え時間と段取り時間が計画と管理における主要因です。
同社はIndustry 4.0は非常に実現可能な目標であると捉えており、その為の機会も積極的に模索しています。

ケーススタディまとめ

今回調査対象となった4企業の現状の生産活動をまとめてみると;

  • 自動化レベル - Kleven(低)、Brunvoll(低)、Ekornes(中)、Pipelife(高)
  • 製品の複雑さ - Kleven(高)、Brunvoll(高)、Ekornes(中)、Pipelife(低)
  • 製品の多様性 - Kleven(高)、Brunvoll(高)、Ekornes(中)、Pipelife(低)
  • マテリアルフローの複雑さ - 
             Kleven(高)、Brunvoll(高)、Ekornes(中)、Pipelife(低)
  • 需要変動 -   Kleven(高)、Brunvoll(高)、Ekornes(中)、Pipelife(低)
  • 繰り返し作業の度合い(1=低いから4=非常に高い、まで) -
             Kleven(1)、Brunvoll(2)、Ekornes(3)、Pipelife(4)
  • AI導入  -   Kleven(低)、Brunvoll(低)、Ekornes(中)、Pipelife(高)
  • ネットワーキング技術 - 
             Kleven(低)、Brunvoll(中)、Ekornes(高)、Pipelife(高)
  • リアルタイム・コントロール -
             Kleven(中)、Brunvoll(中)、Ekornes(高)、Pipelife(高)
  • 産業ロボット - Kleven(低)、Brunvoll(中)、Ekornes(高)、Pipelife(高)

となりました。
ここから方向付けることが出来るのは、繰り返し作業の度合いが低い企業ほど、Industry 4.0を適用する可能性に魅力を見いだせていない、ということです。

≪参考資料≫
https://brage.bibsys.no/xmlui/bitstream/handle/11250/2473354/AIM%2BManuscript%2Brevised.pdf?sequence=2
https://www.en.kleven.no/
https://www.brunvoll.no/about/company-information
https://www.stressless.com/en?redir=1
https://www.pipelife.com/com/