世界がMade in China 2025から学ぶべきこと

世界がMade in China 2025から学ぶべきこと – 記事

習近平国家主席のMade in China 2025政策は2015年に発表されたものですが、2016年にアメリカでトランプ政権が誕生してからは、米中貿易摩擦の元凶として攻撃の対象にさらされています。
Made in China 2025計画の公式文書の中で、中国政府は “中国の製造業は新たな課題に直面している”、という認識を示しています。その上で製造業は新たな中国経済を駆動するエンジンであると位置づけ、即座に開発構造を調整し、開発品質を向上させなければならない、と述べています。製造業の現状に関しては、巨大だがまだ強くはない、冷静に判断をしており、独自のイノベーション能力は薄弱で、主要技術や先進的機器についての外部依存度は高い、との判断を下しています。
この状況から脱却するために、2049年の中華人民共和国誕生100周年までに世界の製造業分野でのリーダーの位置を確立するための段階的な計画と達成目標を示したものがMade in China 2025だと言えます。

今回は、中国のMade in China 2025への取り組みか姿勢から学ぶことが出来る3つの事柄を紹介します。

1. 物事を理解されるようにする;そして将来に関わることはもっと理解されるようにする

経済学者はしばしば「製造業の崇拝」を嘲笑し、製造業を他のどの部門よりも優れた経済成長の推進力と考える理由はないと主張します。
経済が豊かになるに従い、経済は農業から産業へ、そしてサービス業へとシフトする傾向にあります。実際1950年代のアメリカにおいて製造業は経済の30%を占めていました。これは1980年代には20%になり、現在では11%程度となっています。それでもアメリカは世界経済をリードし続け、生活水準の上昇を享受し続けてきました。

この件に関して、中国は何を達成しようとしているのでしょうか?
現状確かなことは、中国は依然として経済発展において米国に遅れをとっているということです。一人当たりの実質所得は米国の3分の1以下に過ぎません。しかし、中国は当面堅固な産業基盤を維持し、その後米国の所得水準に達するにつれてサービスに移行することを単純に目指しているわけではありません。中国が目指すのは、より強力な産業システムを、近い将来の成長のための重要な柱にする事です。中国が描く成長シナリオでは、豊かになるには完全にサービスに移行することが絶対必要条件ではないということが描かれています。

中国は、より豊かになることは完全にサービスに移行することを必要とせず、またそれを意味するものではないことを理解しています。他のいくつかの国では、製造業が経済に大きな役割を果たしています。例えば日本やドイツなどの先進国では製造業がGDPに占める割合はアメリカの2倍となっています。Made in China 2025では、製造業に重点を置きつつ、これをより効果的に発展させる“後方支援”の役割を果たす情報産業や新素材開発、脱石油燃料で走行する自動車技術なども重点項目として取り入れ、総合的な成長を目指しています。

2.製造業の重要性は将来益々大きくなる

巷には、ソフトウェアが世界を席巻している、という意見があふれていますが、実際のところはソフトウェアは世界を牽引しているものの、本当の価値はデジタルと実存の世界の共存にあります。過去数年間の最も強力な技術動向は、デジタル産業革命だと言えます。デジタル革新が、消費財から産業用機械まで、私たちが設計し製造するあらゆる方法に変革をもたらしています。
その好例が3Dプリンティングでしょう。

人工知能を利用して私たちの発想を豊かにし、椅子から航空機の部品に至るまで様々な形状の可能性の実現を手助けします。これは、Additive Manufacturing(アディティブ・マニュファクチャリング)と呼ばれ、何もないところから材料を足し、一度に積層することで、モデル、プロトタイプもしくは最終用途の製品を造形する手法です。複数コンポーネントを1つに統合し複雑な形状を造形するのみならず、1つの造形物にさまざまな素材を使用できる点が、3Dプリント製造の主な利点です。

しかし、その可能性を最大限に活用するには、鋳造からCNC機械加工、3Dプリンティングまでの製造プロセスに関する深い知識が必要です。
Made in China 2025で段階的な目標を掲げ、相互に影響を与える10の重点項目を明確にしたことは、中国の産業界の意識をまとめ目標達成への動機づけを行うためにも効果的であると言えます。
将来の最も変革的で経済的にパワフルなテクノロジーを手に入れるためには、製造業は欠かせないものであると位置づけられています。

3.何を作るかが重要だ

Made in China 2025を推進するにあたり、中国政府は『量から質への転換』を目指すことを内外に明らかにしました。Made in China 2025ではバイオテクノロジーやロボティックのような新分野で、ある意味短期間で競争で優位に立てる可能性が高い分野のみならず、船舶・鉄道・エネルギー・農機具などの伝統的なインフラ分野にも重点を置いています。
ハイテク分野は伝統産業に比べて収入が高くなる為、個々に重点が置かれることは驚くには当たりませんが、成功の鍵となるのはこれら2つの分野の適正なコンビネーションです。
デジタル産業の技術革新は、輸送、通信、エネルギーの分野で国のインフラを強化し、変革を可能にします。そしてそのインフラが、経済システム全体で効率を可能にする結合組織を構成する基礎を構築します。これがひいては、国民の生活水準を引き上げ、効率化や環境問題に貢献します。

デジタル産業革命では、デジタルは製造業を追い出すわけではありません。逆にその可能性と価値を高めるものです。中国はこれをよく理解して、螺旋階段のように全てを包括しながら上昇しようとしています。これは、先進国を含めたほかの国々でもお手本にできる方針でしょう。

《参考資料》
https://www.forbes.com/sites/marcoannunziata/2018/08/03/3-key-lessons-for-global-industry-from-chinas-2025-strategy/#172a6d8f2815
https://www.ge.com/additive/additive-manufacturing