日本における「自律分散型組織(DAO)」の歴史:定義や概念、また今後の展望 – その②

1.「日本」での「自律分散型組織(DAO)」についての現状

DAO (=Decentralized Autonomous Organization) を和訳すると「自律分散組織」です。DAOは上司や仲介人を排除すること、そしてベンチャーキャピタルのような中央集権的な資金調達の仕組みを回避していることから、そのコンセプトは非常に人気があります。

日本でも大企業や金融機関ではフィンテックの一つの取り組みツールとして早くからDAOに注目しています。DAOには管理者がいないため、組織としてのあらゆる意思決定、実行そしてガバナンスは、構成員の合意によりあらかじめ定められたルールに従って執行されます。

DAOの先がけとなったのはビットコインです。システムを継続させるためにはブロックチェーンに取引を記録するために、新たなブロックを生成しその報酬として仮想通貨を手に入れる行為であるマイニングが必要となりますが、ビットコインではこのマイニングの報酬としてビットコインが付与されるという仕組みを持つことで、ネットワーク全体の維持を実現しDAOとして機能しています。

これまで日本企業は買い手と売り手の間での信用補完や、一企業内に必要な機能やリソースを囲い込むことで取引コスト削減を行い、その結果として利益を生むことが業務プロセスでしたが、ブロックチェーンが企業組織の変革を起こしつつあります。信用補完を不要にすることで取引コストを削減し、既存組織が享受してきた権益や利益を削減することに繋がるからです。

ブロックチェーンが物理資産をデジタル資産とリンクし、移転売買を可能にしました。この結果物品の売買が容易になり、ビジネスモデルが大きく変わる可能性があります。

そしてこの仕組みを通貨の仕組みだけに留まらせず、実際の組織にも応用しようとする考え方が昨今よく言われる「狭義のDAO」です。これについては次の導入例で確認しましょう。

2. 「日本」での「自律分散型組織(DAO)」導入例

(狭義の)DAO は現地現物を重視した一部の日本企業で以前から採用され、成功してきた組織モデルのひとつです。それはビットコインで始まったDAOの歴史より古くから存在していました。

1)トヨタ

DAOの代表例が、トヨタの「BR組織 (Business Reform=ビジネスリフォーム)」です。バブル崩壊に伴う国内不況と円高による収益悪化への対応のため、1990年代初頭に様々な収益対策プロジェクトが、トヨタ社内の各部署で展開されましたが社内横断的な課題も多く、組織を超えた業務遂行体制や、既存業務見直しの必要性が高まりました。

そこで1993年に事務部門を対象に経験豊かな人材を時限的に重点配置し、将来につながる業務改革と人材の有効活用を図るため、関係各部門からメンバーを集めた、全社組織横断の統括部門がBR組織です。

各部門から寄せられたテーマは全社、部門、部内の3階層に分け、全社テーマと部門テーマについては役員会の承認を受けるといった、トップダウンテーマと位置づけられました。また既存業務の「30%削減」を活動目標に掲げ、その実現により生まれる余力を新規あるいは重要課題への取り組みや、時短の推進に振り向けることにしました。その他に既存業務効率化の一環として業務量削減の目標を紙の消費量で示した「30%ペーパーレス」活動も展開しました。

1994年から技術・生産技術部門にもBRを拡大し、生産現場を除く全社あげての活動となりました。現在設けられているBR組織は電気自動車の開発、コネクティッド戦略、コミュニケーション改善、現地生産・現地調達推進など、事務領域から、技術領域まで様々です。

2)日産

DAOのもう一つの例が日産で1999年に導入された「クロスファンクショナルチーム (Cross Functional Team=CFT)」です。それは全社的な課題解決のために、部門や職位によらず横断的に精鋭の人材が集められて構成されたチームです。日産リバイバルプラン(NRP)策定やその後の日産の成長の大きな原動力となりました。

現在設けられている日産のCFTは次の通りです:

  • 事業の発展
  • 購買
  • 製造・物流
  • 研究開発
  • マーケティング・販売
  • 一般管理費
  • 財務コスト
  • 車種削減
  • 組織と意思決定プロセス
  • 設備投資コスト
  • ダイバーシティ
  • 時間短縮

3.「日本」での「自律分散型システム(DAO)」の今後の役割

DAOはスタートアップから企業、NPO、国家などの人々から成り立つ組織を根本的に変えると考えられます。

1.創造的な仕事の増加

「社員を契約で制限し、上司の命令に部下を従わせる」といった従来のヒエラルキー型組織体系がマッチしなくなりつつあります。仕事が単純作業が仕事のメインであった時代ならばそれでうまくいっていましたが、AIIoTなどの先端技術の台頭により、人には創造的な仕事が課せられるようになり、単純労働そのものがなくっていくことが考えられます。あるいはAIの進化によっても影響があるとされる、弁護士や税理士などの専門職が減る可能性が高まるかもしれません。今組織を見直す必要が生じています。

DAOにより権限を分散させて、自主的に仕事をした方が概して生産性が高いのです。また純粋なコミット量に応じてプロジェクトのトークンが分配されることによりモチベーションが上がり、また未来のコミットによって既得のトークンの価値も上昇するので、さらに労働者がやる気になるのです。

2. 分散型ネットワークの台頭

成果主義がDAOにより明確化できるため上司にお伺いをたてる必要なく、自由な時間配分で自主的に仕事に取り組むことにより効率が上がります。今やスキルとビジョンさえ一致すれば、企業はリモートワークのエキスパートを世界中からリクルートできて自社プロジェクトを拡大できますし、労働者側にとっても国や地域に縛られないで自由に仕事を選択できます。

分散型ネットワークではブロックチェーンで実現される事例が増えています。その場合プロジェクトには独自トークンが存在し、プロジェクトメンバー、投資家、利用者など関係者全員はプロジェクト価値の上昇という一つの共通インセンティブにより行動をすることになり、中央集権型組織とは異なる一体感が生まれると考えられます。

あるいはグローバルに展開する企業グループの中で、共有できる通貨が作られることも考えられます。同一企業グループ内であればコンセンサスも取りやすく、効果測定も非常に行いやすいでしょう。これは短期的に実行しやすいことといえます。

3. DAOのデメリット

ここでDAOのデメリットも頭においておきましょう。管理者がそれまで行なっていた作業を、関係者全員が一部請け負って行う必要が生じるために、調整費用が分散こそしているものの、その負担は同じか増えてしまうことが多いです。タスクの配分やレビューなどの業務について全て投票で決定していくことなど、通常の業務プロセスでは到底で実現し得ないと思います。

したがって調整コストを分散させるのみならず、その総量を減少させるようなDAOの構築を考える必要があると考えられます。

4. 「日本」での「自律分散型システム(DAO)」によって今後どんな暮らし方になっていくのか(消費者側の変化)

まず初めにアメリカのお話から始めたいと思います。タクシーの運転手は、運営会社の従業員となることで給料を得ていました。しかしUberの登場によって雇用契約を結ばずとも、同等の価値が提供できる世の中に変わったのです。この流れが加速すると今度はUberという仲介すらも排除するかもしれません。結局のところUberのドライバーは、突然の報酬の減額など、Uberからの支配を感じていました。そんな不満を打ち消すかのように登場したのが、イーサリアムをベースとしたDAO「Arcade City」です。このサービスを利用すればドライバーは自由に金額を設定して、ユーザーに提案することができるのです。

日本では現在Uberが本来のビジネスモデルを展開することが難しいですが、サービス業でユニークなDAOノモデルが生まれる可能性は高いです。

日本でもDAOにより組織と市場の境界も変化する可能性があります。今後はリソースを社内に保有するよりも、アウトソースにするほうが割安になる可能性がありますので、伝統的なピラミッド式運営体系からオープン型運営体系、そしてDAOに変化していくことでしょう。

広域な経済圏だけでなく、非常にマイクロな経済圏も拡大するでしょう。仮想通貨によりコミュニティ通貨ができるれれば、仲間やコミュニティごとの経済圏が誕生するでしょう。あるいは、目的限定の通貨といった経済圏ができるかもしれません。
このような状況では、様々な通貨が併存し、多種多様な通貨が流通し合う時代が来ると考えられます。そうであれば、利用場面ごとに自分の使いたい通貨を選択していくという生活がやってきそうです。
ブロックチェーンや仮想通貨を活用することで、取引状況を確認することができます。そのため商品の発送や到着確認もできます。仮想通貨により売上代金を早く回収できる可能性が生まれ、資金の効率性向上にも繋がるでしょう。

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