日本における「自律分散型組織(DAO)」の歴史:定義や概念、また今後の展望 – その①

日本における「自律分散型組織(DAO)」の歴史:定義や概念、また今後の展望 – その① – 記事

1. 「自律分散型組織(DAO)」の言葉の意味・定義

DAO (自律分散型組織)とはDecentralized Autonomous Organizationの略称であり、簡単に言えば労働者がいても経営者がいない組織のことです。組織を会社と言い換えて、DAC(Decentralized Autonomous Corporation)と呼ぶこともあります。

経営が自動化された組織で市場参加者が仲介企業を介さずに、他の参加者と連携できるというもので、DAOはブロックチェーンを利用したベンチャーキャピタル投資の方法の一つです。

DAOには特定の主体がおらず、いかなるビジネスルールや制御下にも置かれていません。意思決定や意思決定に至るためのプロセス、実行、組織全体のガバナンスや紛争解決は人が決済するのではなく、プロトコルが予め定めたルールに従って執行します。これを実現するための組織は自律分散型である必要があります。

そしてDAOを維持するために欠かせないのは報酬です。あらゆるネットワークやコミュニティの運営費用は参加者のモチベーション維持や、活動のための経済支援の意味でも何らかの報酬が必要です。例えばビットコインではブロックを生成すると、プロトコルからの報酬としてビットコインが発行されますので、これが参加者に対するインセンティブ機能として働きます。

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DAOを支える一つの重要な要素は資金です。DAOでは企業がプロジェクトを遂行するために仮想通貨で行う資金調達の方法であるICO (Initial Coin Offering)で、多くの場合資金を調達します。DAOにより発行されるトークンには何らかの価値が必要となり、DAOの将来の方向性に投票する権利はトークン所有量によって決定されます。いわばトークン所有者は株主としての役割をも担うのです。

DAOは一度リリースされると完全に独立した状態になります。よって所有権を主張できる人は誰もいません。すべての取引とプログラムのルールセットは、ブロックチェーン上に記録されます。DAOがどのように資金を利用するかは、分散ネットワークでの合意形成を可能にするコンセンサスプロトコルにより調整されます。

スパムを避けるために将来の方向性に関する提案には、保証金が必要になる場合もあります。DAOが製品を設計・構築したり、ソフトウェアやハードウェアを開発することはできません。そのような作業はコンセンサスプロトコルに基づき、正しくアウトソーシングされます。

DAOのほかに「The DAO」がDAOを語る上でよく登場しますが、The DAOはDAOの世界初のプロジェクトのことです。後ほど説明しますが「The DAO事件」が、The DAOを有名にしてしまいました。

2. 「自律分散型組織(DAO)」という「言葉」はいつ生まれたのか

DAOは2013年ごろからビットコイン・ネットワークの運営体制から着想を受けて提唱されたコンセプトです。ビットコインが世界で初めてのDAOといわれています。分散的に組織や会社あるいはコミュニティ自体が自律して運営されることを表しています。

その後独Slock.Itのプロジェクトの一つとしてThe DAOが発表されました。The DAOは非中央集権型(自律分散型)投資ファンドのプロジェクトです。The DAOで通貨を管理するしくみをEthereum (イーサリアム)といい、正式名称はEther (イーサー)なのですが、最近では通貨自体をイーサリアムと呼ばれることが増えています。The DAOは既に大量のETH(イーサリアム上の通貨)を調達しており、世界最大のクラウドファンディングとしてリストされています。

世界で初めてのDAOだと言われるビットコインが「決済」を主としたシステムであることに対し、イーサリアムは「アプリ作成のプラットフォーム」です。つまりイーサリアムのシステムを利用して多様なアプリを作成することが可能です。ビットコインの元データを使ってより質の良いプログラムを生み出そうとしたのがイーサリアムなのです。

The DAOはコードベースで動く自動化されたガバナンスと、意思決定を下す自律分散型のプロトコルで、世界中の事業への投資を行うためのプラットフォームです。これに参加するにはThe DAOトークン作成期間に、資金としてThe DAOへETHを送金し、あらかじめThe DAOトークンを手にする必要があります。

The DAOのコードは従来の企業体でも利用できますし、個人のプロジェクトでも利用できます。全ての投資先の決定にはプラットフォームに提出されたプロポーザルに対して、不特定多数の参加者がThe DAO トークンで投票を行い、ネットワーク自体が投資ファンド機能として自律的に動きます。

さてここで大事件となったThe DAO事件について情報共有をいたしましょう。これはイーサリアム上に作られた投資ファンドが1.5億ドルを集めた際、イーサリアム上に構築されたThe DAOのシステムにバグがあり、そこを突かれて5千万ドル相当のETHが盗難に遭った事件です。

もっともこれはイーサリアムそのものの問題ではなく、The DAO側のコードに問題がありました。The DAO事件の後でイーサリアムがハードフォーク(それまでのルールにかわり新ルールを採用すること)するに至りました。

このThe DAO事件を忘れてはいけないと唱える人たちにより、仮想通貨イーサリアムクラシック(Ethereum Classic) が立ち上げられたことも当時話題となりました。

3. 「自律分散型組織(DAO)」の概念が生まれた背景

2008年米大手投資銀行のリーマン・ブラザーズの経営破綻を皮切りに、世界恐慌が起こりました。俗に言うリーマンショックです。その結果既存の金融機関は信用を失いました。

元来既存の金融機関の取引台帳はハッキングされやすいという脆弱性がありました。リーマンショックが起きた一ヶ月後サトシ・ナカモトという人物が、これまでの暗号マネーに関するアイデアを統合し、ブロックチェーンという暗号プロトコルで運用されるビットコインという仮想通貨の論文を発表しました。

ブロックチェーンの分散型台帳は台帳管理が民主化され分散されているので、たとえ1箇所にハッキングが行われたとしても、他のコンピュータに正しい台帳が保持されることから、ブロックチェーンは次世代の通貨として有望視されたわけです。そして登場したのが元祖DAOともいえるのがビットコインだったのです。

4. 「日本」にていつごろから「自律分散型組織(DAO)」という言葉が広まりはじめたのか

その後2016年に日本で活動している取引所としては、一番最初にビットコイン取引所であるKrakenがDAOトークンの取引を開始し、その後レジュプレスが運営するCoincheckが後に続いたので、日本でもDAOが広まりだしました。

なぜ広まったのか、その背景は・環境はどうだったか

当時の日本は世界第三位の経済大国であり、GDPは米ドル換算で4兆4,100億ドルでした。リーマンショックで大打撃を受けた大企業や金融機関が、いち早くブロックチェーンやビットコインなどの新たなフィンテックビジネスに大きな関心を示しました。

5. 「日本」「自律分散型組織(DAO)」におけるキーパーソンとその人の活動

ここで日本のDAOのキーパーソンを紹介しましょう。

野口悠紀雄氏 (早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問)

野口氏はバブルの名付け親で、常に日本経済の構造的問題に物申してきた元大蔵官僚の経済学者です。早い段階からブロックチェーンやDAOに注目をしていて、入門者からエキスパート対象の著作も多く、特に「仮想通貨革命」や、「ブロックチェーン革命 分散自律型社会の出現」は、DAOの指南書としても定評が高いと言われています。

6. 「日本」での「自立分散型組織(DAO)」の今後の展望

The DAOは既存のファンドや、ベンチャーキャピタルなどに取って代わる可能性が大いにあります。同時にThe DAO事件は日本の投資家にもよく知られているので、保守的なアマチュアの投資家グループが一気に動くのも難しいようです。

2019年1月にイーサリアムクラシックが51%の攻撃を受け約5,500万円相当が二重支払いされたと報告をされています。しかし仮想通貨を安全に保管する方法が確立し個々人がセキュリティ意識と正しい認識を持てば必要以上に心配することもありません。

DAOは価値自体が高まり将来企業や他の組織にとって、基本的な骨組みとなるとも考えられます。そうすればいずれはCEOが存在しない企業も出てくるかもしれません。

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