高精度の穀物管理で環境にやさしく、イールドの高い農業を目指す

高精度の穀物管理で環境にやさしく、イールドの高い農業を目指す – 記事

20世紀、特に1980年代までは、農業といえば農薬や肥料を大量に投入し収穫量を増大させることにその主眼が置かれていました。ところがこれは、土壌の地力の劣化、地下水汚染、生態系の破壊、健康被害など様々な深刻な問題を引き起こしました。これらの経験を経て、長期的視野から持続可能な農業の実現に向け、精密農業という概念が生まれました。2000年代初頭より普及し始めたこの概念は、農地・農作物の状態を細かく観察・制御し、農作物の収量及び品質の向上を図り、その年の収穫状況に基づき次年度の計画を立てる、というものです。このためには、適切な量の水、肥料、害虫駆除剤を最も効果が高いタイミングで利用することが必要となります。

近年のIoTの普及、寿命の長い電池を利用したセンサー、5G などの通信環境の向上により、精密農業のテクノロジーは近年飛躍的に向上しています。
農家にとっては、精密農業を推進することで、より品質の高い穀物の生産が可能になるだけでなく、水、肥料、害虫駆除剤にかかる費用の無駄を抑えることで、テクノロジーにかけた費用の回収さらにはよりイールドの高い作物の生産を達成することが可能となります。

今回は、日本の種苗企業、サカタのタネのアメリカ法人Sakata Seed America, Inc.がインドを本社とするITコンサルティング会社Infosys(インフォシス)と共同で取り組んだ精密農業のテストベッドを紹介します。

テストベッドの概要

世界の人口は驚異的なスピードで増え続けており、これが世界規模での食物需要を大きく増加させています。さらに気候変動及び年々減少する農地の面積により農業セクターは、コストを削減しイールドの高い穀物生産を行う必要性に迫られています。
本テストベッドでは、高精度の穀物管理を実現することで世界の食糧事情の改善を目指します。商業用農地や企業全体に配備された様々な環境センサーやその他情報源からのリアルタイムデータの分析を通じて、収穫量の向上に焦点を当てます。

航空写真と複数のセンサー技術を統合して、穀物環境の「360度」ビューを提供し、ほぼリアルタイムでmメッシュやセルラーネットワークを介して24/7でデータ・トランスミッションを実現、更に大量のセンサーデータの収集と分析に通して、データの解析機能を充実させる、などに取り組みます。

本テストベッドが期待する商業的利益は、穀物やその育成環境での異常の早期検知と是正措置能力、穀物にとっての最適環境を特定し、最適化された空中サンプリングと検査による運用効率の向上を介して穀物のイールドを向上させることです。

Infosysが取り組む精密農業

就業人口の多さ、関連業種が多岐にわたる農業が産業として国家に大きな比重を持つインドを本拠とするInfosysは、精密農業の実現に向け、様々な取り組みを行っています。
インドでは、人口の約60%が農業に従事していると言われています。そのため、農業にAIを活用し農家の所得を倍増させようという計画も、の国家戦略として進められています。2018年1月にはモディ首相が「農家の収入が2倍になることを約束する」、と発表しました。
Infosysの精密農業テクノロジーは、センサー、農業機器、ウェザー・ステーション、GPSからのリアルデータを、農家の過去の収穫記録と統合します。これを行うことで、その農地に特化した土壌水分、栄養素レベル、排水、作物収量などのフィールド固有の変数を正確に分析できるのです。このデータが、農地や農作物の輪作への投資から、土壌の修復や地表水の管理まで、戦略的な決定をサポートします。

Infosysが採用する精密農業のフットプリントは、(1)農地の傾斜と輪郭マッピング、(2)土壌マッピング、(3)穀物イールドマッピング、(4)農地の生産性アセスメントの4分野から成り立っています。
精密マッピングが、土壌特性、フィールドコンディション、雑草の伸び具合、穀物のコンディションをベースとした、ゾーニングを行うことで、農業のリソース活用を最大限に伸ばします。Variable Rate Technology (VRT、可変レート技術)ソリューションが、農業設備を接続・統合することで、種子と農薬の使用を最適化します。
同社は又、ブロックチェーン・テクノロジーを活用することで、食物のトレーサビリティ、農業設備の最適化などにも取り組んでいます。

サカタのタネ

同社は、1913年創業の神奈川県に本社を置く種子/苗木/球根などの製造販売、育種研究、造園緑化工事、温室工事、農業施設工事の設計などを行う企業です。
営業ネットワークは世界170か国以上に達し、その国・地域のニーズに応えた品種提供に尽力しています。
1965年以降、キャベツ、スイカ、カボチャの育成品種分野で、オールアメリカンセレクションズの入賞を複数回果たしています。
アメリカの現地法人であるサカタ・シード・アメリカでは、ウッドランド・イノベーションセンター、サリナス研究農場、フロリダ研究農場、マウントバーノン研究農場を設置し、アメリカの土壌に適した種苗の品種改良に取り組んでいます。

精密農業

精密農業とは、その名が示す通り、水、肥料、農薬などの投入量を精密に管理することで、て生産性を高め、収穫量を最大にすることを意味します。精密な農業管理手法は、収穫量を増やしながら、使用される栄養素や他の作物の投入量を大幅に減らすことができます。
今では、精密農業は、農作物、土壌、および農家を尊重するため、持続可能な農業の基盤となっています。持続可能な農業は、長期的に生産を維持するのに必要な生態学的、経済的および社会的限界の範囲内で食物の継続的な供給を保証することを目指しています。
これは又、機械の効率を高めてそれを使用することによって、環境に対する農業への圧力を軽減することにも貢献しています。

≪参考資料≫
https://www.iiconsortium.org/precision-crop-management.htm
https://en.m.wikipedia.org/wiki/Precision_agriculture
https://www.sakata.com/
https://www.infosys.com/industries/agriculture/industry-offerings/Pages/precision-farming.aspx

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