2019年サイエンス分野での中国が目指すもの

2019年サイエンス分野での中国が目指すもの – 記事

Made in China 2025の重点分野は製造業のみのとどまらず、宇宙開発、先端医療、新素材開発などサイエンス分野に多くの焦点が当てられています。
中国は2019年を1月3日のChang’e-4の月の裏側への着陸成功という明るいニュースで迎えました。
米中貿易摩擦の影響を受けての経済成長の鈍化など、厳しい成長環境の中で今年中国が目指すサイエンス分野での達成目標を紹介します。

1. 月の裏側の探索

Chang’e-4の月の裏側への着陸成功というニュースは、中国国内のみならず欧米ニュースメディアでも大きな取り扱いを受けました。
太古に起きた月への隕石の衝突は、大きなクレーターを残したと言われており、これが現在では深さ13キロに達しているとみられ、大規模なインパクターはおそらく月の深部地殻、そしマントル物質を露出させたと考えられています。

今回月の裏側への着陸に成功したChang’e-4は、地球の将来にとっても重要なミッションを背負っています。それらは;月の岩石や土壌の化学組成を測定;ミッション期間中を通しての月の表面温度の測定;電波望遠鏡を使って、低周波電波天文観測と研究を実施;宇宙線の研究;
太陽コロナを観察し、その放射特性とメカニズムを調べ、太陽と地球の間のコロナ質量放出(CME)の進化と輸送を探る、などです。
Chang’e 4がこれらのうちいくらかでも見つけて研究することができれば、月の内部構造とその起源についての前例のない見解が得られるだろうと、期待されています。

2. コズミック・シグナルの受信

中国の貴州省に設置された世界最大の望遠鏡、500メートルの開口球面電波望遠鏡(FAST)が2019年9月より研究者にオープンされいよいよ正式に始動します。
China Daily(中国日報)によれば、2016年のトライアル・オープン以来、FASTは既に急速に回転し、一定の間隔で電磁放射を放出している44個の新しいパルサーを発見しました。

FASTのチーフ・サイエンティスト、Nan Rendongが専門誌Nature(ネイチャー)に語ったところでは、このプロジェクトは、地球外の生命を示唆する可能性のある宇宙の分子や、宇宙の他の部分からの潜在的な通信信号の検出を支援するために使用される、ということです。
FASTのウェブサイトが掲げる公式の目標は;大規模なニュートラル水素の調査;パルサー観測;国際超長基線干渉法(VLBI)ネットワークをリードする;星間分子の検出;星間通信信号の検出(地球外知能の検索)などです。
FAST望遠鏡は、2016年10月にBreakthrough Listen SETIプロジェクトに参加し、宇宙での知性的な地球外通信を探索を実施しました。
この望遠鏡には、重力波・ブラックホールなどの検出に役立つだろうとみられており、世界中の天文学者の注目を集めています。

3. 遺伝子組み換えに関する規制

2018年11月に、中国・南方科技大学の賀建奎副教授が、ゲノム編集技術で受精卵の遺伝子を組み換え、HIV(エイズウィルス)にかかりにくい体質の双子を誕生させたと発表したことは、世界中に大きな反響を巻き起こしました。
これを受けて中国教育省は、国内の大学および医療機関で利用されている遺伝子組み換え技術に関して、レビューを行うように要請しました。同省は、遺伝子編集プロジェクトに携わっている職場の倫理および倫理委員会の承認プロセスを検査する機関を設定する方向です。
中国では、過去にCRISPR-Cas9遺伝子組み換え技術を利用したいくつかのプロジェクトを実行したことは確かです。しかし、今回受精卵の遺伝子組み換えが行われ、実際に双子の誕生を迎えたことで、2019年に中国国内でのCRISPR-Cas9の使用に関する公式ガイドライン、又は規制の必要性の議論を引き起こす可能性があります。

4. AI開発競争

2018年には中国のAI/マシーンラーニング分野での進歩が話題となりましたが、2030年までにAI分野で世界にリーダーとなることを目指す中国が、2019年でもこの分野で数々の話題を提供することは、想像に難くありません。
中国でAIの研究開発を行う企業への資金提供は非常に活発に行われており、この傾向は今年も続くものとみられます。また、政府を挙げて人材と資金援助を行っており、2030年の目標達成を何としても実現する決意を見せています。
一方、この分野ではアメリカも積極的に開発に取り組んでおり、今後も開発競争の激化が予測されています。

≪参考資料≫
https://www.scmp.com/lifestyle/gadgets/article/2180118/2019-china-science-look-ahead-moon-landing-ai-arms-race-what
https://en.wikipedia.org/wiki/Chang%27e_4
https://en.wikipedia.org/wiki/Five_hundred_meter_Aperture_Spherical_Telescope