危険な作業現場でのセーフティに関するテストベッド

危険な作業現場でのセーフティに関するテストベッド – 記事

International Labor Organization(ILO、国際労働機関)の調査によれば、世界全体で年間230万人もの現場作業員(建設・製造・オイル/ガスなどの広範な業界を含む)が職業が原因の疾病に罹患したり、現場で負傷している、という結果が出ています。さらに、毎日86万件もの怪我につながるような事故が発生しているということです。
このような事象により直接的・間接的に発生するコストは、世界全体で2.8兆ドルにも上るという試算があります。
現場や作業場での事故の発生の可能性を防ぐことは、作業に従事する人たちの健康を守るだけでなく、企業のコスト軽減につながります。
今回はIICが取り組む、危険な作業現場でのセーフティに関するテストベッドを紹介します。

テストベッドの概要

作業現場での事故や怪我を防ぐためには、採用時の安全教育や作業開始時の安全確認だけでは十分ではありません。作業員が現場で作業を行っている際や、現場内を移動している際にもその作業環境や周辺環境を個別にモニターし、個々にハザードに関する警告を発する必要があります。
このテストベッドでは、安全帽・ヘルメットに装着したセンサー機能を活用することで、個々の作業員の職場での安全意識を向上させることで事故を防ぎ、ひいては企業のコスト削減を実現することを目標としました。

参加メンバー企業:Wipro(ウィプロ)、 Microsoft(マイクロソフト)、 BLOCKS Wearables(ブロックス・ウェアラブル)
テストベッドの目的:

  • センサー対応装備を装着した作業員とスマート・インフラのための最適な通信ネットワーク・アーキテクチャを評価する。
  • ニアミスイベントや安全に関する事象を未然に防ぐ又は削減することで、職場の安全性を向上させ、企業全体の安全のために作業現場間の可視性を向上させる。
  • 作業員の健康状態と仕事の割り当てを積極的に管理する為、個々の健康バイタルの測定を実行する。
  • 安全基準(OSHAなど)の改善を視野に入れ、関連する従業員およびオペレーションからのデータフィードを分析することにより、IoTによって実現される新しい安全順守指標を構築する。
  • センサー/操作データからの洞察を、拡張仮想現実対応の教育プログラムに積極的に取り入れることにより、安全教育を改善する。

改善策:ソリューションでフューチャーされているのは、エッジ・レイヤーです。これには、装着可能な数々の統合されたセンサー(例えば、ヘルメット、腕時計、ゴーグル、計装重機、ゲートウェイ及びアクセス・ポイントなど)及び、デバイスマネジメントやデータ解析能力などが含まれています。オペレーション・コマンドセンターおよび緊急対応チームにビジネスアプリ及びダッシュボードを提供するエンタープライズ・レイヤーなどもここに含まれます。
テストベッドの有効性及びその成否は、このテストベッドで取り上げられている各使用シナリオに関連する主要業績評価指標(KPI)の測定と追跡によって確認されます。
市場における実益:アメリカでは、業務関連の疾病への補償の直接コストは600億ドルに上ると言われています。間接コストに至ってはその17倍になるという試算も出ているほどです。

The Occupational Safety and Health Administration (OSHA)は、年間3万件以上のインスペクションを実施していますが、その74%で罰則が科せられる結果となっており、昨年一年でのアメリカでの罰金の総額は2億5000万ドルを超えていました。
コネクテッド・ワークフォース・セーフティのテストベッドは、この直接/間接コストの軽減に大きく貢献することが可能です。

センサー付きのデバイスを勤務中装着することで、作業員の安全に対する意識が向上し、現場での危険に対する可視化が進むことで、万が一事故が起きた場合の対応時間の削減や予防に効果が上がります。
作業員の作業現場での事故が減ることは、コストの軽減だけでなく社会的な観点からも、利点はとても大きなものです。

職場の安全に取り組むWipro

今テストベッドでリーディングロールを演じたWiproは、インドのバンガロールを本拠地と1945年に創立された、現在インド第2位のIT企業です。
同社のワーカー・セーフティ・ソリューションには、2つのカギとなるテクノロジーが利用されています。スマートヘルメットとスマートウォッチです。
スマートヘルメットには、落下感知、有毒ガス感知、空気圧などをチェックするセンサーが取りつけられているだけでなく、作業員の現在位置を特定するためのWiFiまたはBluetoothなどの機能が装着されています。さらに、ヘルメットには着用者を特定するシステムも備わっており、誰が現場のどの場所でいつ作業を行っているかの特定を可能にします。

スマートウォッチは、個々の作業者に、作業環境に問題(例えばガス漏れなど)が発生した際に警告を発する機能を有しています。
更に同社は、Connected Worker Platform(CWP、コネクテッド・ワーカー・プラットフォーム)を活用することで、デバイス・マネジメント・レイヤーを管理しています。このアプリはヘルメットからのデータを解析レイヤーに送信し、安全順守の度合いをCWPダッシュボードへの見える化を実現します。

作業現場のセーフティの未来

職場の安全を確保することは、企業にとってますます重要な課題となってきています。
しかし、今回のテストベッドで利用されたようなセンサー付きのヘルメットが、作業員のプライバシーを侵食しているのではないかという疑問も一部では呈されており、安全性の確保と作業員のプライベート確保という難しいバランスも今後益々要求されるようになることでしょう。
この件に関して、Dr. Sanjyoy Paulは、テクノロジーだけに注目するのではなく、事業のアウトカムに焦点を当てることが重要だと述べています。
Dr. Sanjoy Paulによれば、デジタルシステムが独自のテクノロジーのみにより推進されているわけではなく、企業側が危険な個所に気づいたり作業員の安全意識が向上したりすることによるコストの軽減、デバイス利用者のユーザー・エクスペリエンスの工場などが全体としての事業のアウトカムにポジティブな影響を与えるのです。

≪参考資料≫
https://www.iiconsortium.org/connected-workforce-safety.htm
https://wiprodigital.com/2017/11/07/successful-partnership-iot-worker-safety-iot-solutions-world-congress-2017/
https://wiprodigital.com/2017/07/13/wearables-and-connected-workers-how-manufacturing-will-change-forever-part-1/
https://wiprodigital.com/2017/07/25/wearables-connected-workers-manufacturing-will-change-forever-part-2/