AI分野で世界のリーダーを目指す中国

AI分野で世界のリーダーを目指す中国 – 記事

世界AIシステム市場は、2018年は前年対比54.2%増の191億ドルに達すると予測されていましたが、2021年には522億ドル規模へ拡大すると言われています。
アイルランドに本社を置くコンサルタント、Accenture(アクセンチュア)が実施した2035年を想定した経済成長率の予測で、AIを活用した場合の平均経済成長率が4.6%と想定され、AIが浸透しなかった場合の経済成長率2.6%と比べ2倍近くとなるという結果が出ました。

中国国務院が2017年7月に公布した「次世代人工知能発展計画」では、人工知能(AI)を経済発展の新たな牽引役とし、2030年までに理論や技術、応用などの分野で世界一を目指すことを目標に掲げました。
2018年5月には、安徽省合肥市で2018世界製造業大会を開催し、国連工業開発機関(UNIDO)やドイツ産業連盟などを主催者に迎え、製造強国を目指す「中国製造2025」とドイツの「インダストリー4.0」の融合と協力活動の一環を内外に示した形となりました。

次世代人工知能開発計画

2017年に中国は「次世代人工知能発展計画」を発表し、自国のAI産業をUS1,500億ドルの産業に成長させ、2030年までにこの分野で世界のリーダーとなる指針を発表しました。この第一段階の達成目標が2020年までにアメリカのAIテクノロジーに追いつくことです。このために中国が最初に着手したのがAI産業への資金提供です。2016年に世界のAIスタートアップに中国が資金を提供した割合は、全体の11.3%でした。これが2017年には48%へと飛躍的に伸び、亜米利加の38%をしのぐ規模となりました。
中国のAI戦略は3段階で構成されています。

第一段階の2020年までの目標は、ビッグデータ・インテリジェンス、自動化インテリジェンス・システム、クロスーメディアム・インテリジェンス、スワム・インテリジェンス、ハイブリッド・エンハンスト・インテリジェンスとAIの基礎的セオリーに重点を置き、2025年までには、AIを医療分野、都市インフラ、製造業、農業、建設、防衛及びAI法制、セキュリティ、管理分野での活用を達成し、2030年までにはソーシャル・ガバナンス、防衛、製造業のバリューチェーンでのAI活用を通して世界のAIリーダーとなることを目指しています

ニューヨークタイムズ紙はそのテクノロジー欄で、インターネット&テクノロジー・アナリストMary Seeker女史の言葉を引用しています。「今日この分野で上場を果たしている上位20社のうち11社がアメリカ企業であるであるのに比べ、中国企業は20社を数えます。20年前には、中国企業で上位20社に名を連ねた企業はゼロでした。5年前には2社しか上場企業はありませんでした。」、これが中国の本気度を示しています。新華社通信によれば、2017年に中国のインターネット&テクノロジー分野は18%の成長を記録しました。中国経済全体の成長が6.9%であったことを考慮すれば、これは驚異的な成長です。

中国のAI産業の牽引車

香港で発行されている日刊紙South China Morning Post(南華早報)の2018年10月1日付電子版では、AI分野のスタートアップのベスト10を伝えています。同紙によれば、ベスト10には中国から5社、アメリカから5社が名を連ねていますが、1位は中国のSenseTime(センスタイム)でその規模は、US45億ドルです。2位のアメリカ企業CrowdStrik(クラウドストライク)がUS30億ドルなのでこの差は歴然としています。

ただし、中国企業で10位までにランクインしているスタートアップ(SenseTime―1位、Cambricom-4位、Megvil-5位、CloudWalk-6位、YITU-7位)はすべてコンピューター・ビジョン(コンピューターに取り入れた生の画像情報を処理して、必要な画像情報を取り出す技術)を専門とする企業で、ランクインしたアメリカ企業の専門分野がサイバーセキュリティ、ヘルスケア、金融、言語など多岐にわたっていることを考慮すると、ダイバーシティの必要性は否めません。
しかし、中国は2017年に次世代人工知能発展計画を発表した際、発展計画を4分野に分け、それぞれの分野にリーダー企業を指名し、この企業を中心にそれぞれの分野を牽引することを目指しています。

これらは、自動運転分野のBaidu(バイドゥ)、スマートシティ分野のAlibaba Group Holding(アリババ)、医療分野のTencent Holdings(テンセント)、そして音声認識分野のiFlyTek(アイフライテック)です。
アイフライテックとテンセントは、アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)が選出した
「2017年 世界で最もスマートな企業50」の5位と8位に名を連ねました。このランキングに選出されたほとんどの企業がアメリカに本拠を置くことを考えると、これは画期的なことだと言えるでしょう。

AI分野における中国の躍進は、米中貿易不均衡に関する課題に火に油を注ぐ要素となっています。これに対して、中国の国務院副総理、Liu He(劉鶴)は、上海で開催された『世界AIカンファレンス』の場で、

「AI技術はゲームチェンジャーとしてとらえられるべきで、その利点は共有され、課題は世界規模で解決されるべきである」

と語り、技術の共有に関する保護主義の風潮に警告を発しました。

≪参考資料≫
https://multimedia.scmp.com/news/china/article/2170597/MIC2025/
https://chinacopyrightandmedia.wordpress.com/2017/07/20/a-next-generation-artificial-intelligence-development-plan/
https://www.scmp.com/comment/insight-opinion/world/article/2167192/trade-war-or-not-ai-blockchain-and-new-energy-vehicles
https://www.scmp.com/tech/article/2166177/made-china-2025-china-has-competitive-ai-game-plan-success-will-need