ドイツにおける「ロボティックプロセスオートメーション」の歴史:定義や概念、また今後の展望 – その①

ドイツにおける「ロボティックプロセスオートメーション」の歴史:定義や概念、また今後の展望 – その① – 記事

1. 「RAP」の言葉の意味・定義

ロボティックプロセスオートメーション(Robotic Process Automation=RPA) をそのまま訳せば、ソフトウェアロボットが業務プロセスを自動化するということを意味しています。これまで人間のみが対応可能と想定されていた作業もしくはより高度な作業を、人間に代わって実施できるルールエンジンやAI機械学習等を含む認知技術を活用して、代行したり代替する取り組みです。つまり今まで人間でなければできないとみなされていた、複雑な運用であるが作業自体は単純な繰り返しの事務作業を、ソフトウェアロボットが代行するのです。

RPA は多くの場合専用のハードウェアは不要で、既存システムにソフトウェアロボットを導入し、カスタマイズして動かします。ソフトウェアロボットは不休で動き経年劣化の心配はなく、機械である産業用ロボットのように定期的なメンテナンス作業も不要で、清掃する必要もありません。

産業用ロボットが手や足など身体のある部分の動きを代行してくれるのに対し、RPAは主にキーボードやマウスクリックなどのPC 操作を代行してくれます。産業用ロボットが重労働に強いのに対し、RPAは頭脳労働に強いといえます。つまりブルーカラーの人々を楽にしたのが産業用ロボットであるのに対し、ホワイトカラーの人々を楽にするのが、RPA のソフトウェアロボットなのです。

ERPなど業務アプリケーションの導入が進んだおかげで、システムの効率化は実現されてきましたが、メールに添付された請求書のデータを、マニュアルで複数システムに入力しているのが未だ現実ですが、今まで自動化が無理とみなされていた複雑なオペレーションから、ついに解放される時代が到来したのです。

従来型のプロセス自動化で必要とされてきた、長期間に渡る既存システムの変更や業務フローの見直し等を経ることなく、既存の業務を効率化できる点がRPAの最大の特徴と言えます。そして高頻度、大量、単純な反復作業が向いています。

RPAは導入した初年度ですでに30-200%の潜在的なROI (Return on Investment=投資した資本に対して得られた利益)を生み出すと、欧米のコンサルティング会社は述べています。

一般的にRPAの概念では基本的には設定されたプロセスを、設定された通りの順番で設定された通りに実行することしかできません。したがって何らかの判断を伴ったり、手順が毎回変わったりするような業務には適していません。

あるいは画像認識や座標取得などの機能を持ち、ルール処理エンジンに判断基準や対処などのシナリオを設定することで処理を行いますが、設定されていない例外処理には対応できません。

今後RPAには機械学習機能を兼ね備え、非定型的な業務に対応できることが想定されます。すでにシステムの自己学習機能や判断力のレベルによって、RPAの先には次の2つのレベルが登場しています。

EPA (Enhanced Process Automation):

RPAよりより人間に近い業務に対応することができるとされます。問い合わせに自動回答したり、複数データの分析を元にした売上予測などが可能となり、ルールづけや情報の構造化がされていないデータや知識を処理することができるので、RPAが苦手とする非定型業務を実行できます。

CA: (Cognitive Automation):

経験に基づく自動化が可能であるとされています。大量のデータをもとに自己学習を行い、最良の判断を下すことのできる、AIシステムを活用したものです。大量の情報からディープラーニング(深層学習)によって自主的に学習して能力が向上するため、人間の感情に配慮したメッセージの作成や、外的条件にあわせた仕入れ量調整など、人間と近い水準の意思決定が可能になると目されています。

現在実用的に使われるのはRPAのレベルで、EPA、CAはまだ開発途上であり、一般化されていません。

2. 「RPA」という「言葉」はいつ生まれたのか

いわゆるソフトウェアロボット技術は以前より研究されていましたが、2013年頃アメリカを中心に、ホワイトカラー業務にロボットを導入することで生産性の効率を図ろうとする気運が高まりました。その後2016年に欧米のコンサルティング企業がRPAを提唱しました。

3. 「RPA」の概念が生まれた背景

2000年代には業務効率化の一環として、企業の運営上の業務やビジネスプロセスの一部を専門性が高い外部企業に委託することで、業務の効率化を図るというBPO(Business Process Outsourcing= ビジネスプロセスアウトソース)が推進されました。コスト削減を目的として安価なコストで業務を委託できる国でのBPOを推進する企業が多くいましたが、近年はその安価なコストを売りにしていた国の人件費の高騰により、コスト削減の効果が薄れてきてためにBPO業務が衰退してきました。

そのため、新たなコスト削減や業務効率化のためのソリューションが必要になったことから、ソフトウェアロボット技術に注目が集まり、RPAの概念が生まれたと考えられます。

4. 「ドイツ」にていつごろから「RPA」という言葉が広まりはじめたのか

ドイツでは他国に先駆けて、ドイツの第4次産業革命として、製造業のデジタル化、コンピュータ化を目指す国家戦略戦略である、インダストリー4.0を2011年に発表しました。その後製造業とITがダッグを組み、様々なプロジェクトが起こりました。まずドイツではABB社のYumiロボットで代表される産業ロボットが開発され、ドイツのみならず多くの国の製造工場で採用されました。その後金融業界を中心に業務効率化の気運が高まり、RPAが初めて提唱された2016年以前からソフトウェアロボットの研究が始まりました。

なぜ広まったのか、その背景は・環境はどうだったか

ドイツでRPAが広まった背景として考えられるのが、ドイツでは元来BPM(Business Process Management)が多くの企業で導入されていました。つまりホワイトカラーの業務改善と、業務プロセスの向上に取り組む基盤が以前からあったために、SAPというERPのメガ企業がドイツにあることも影響していますが、ERPなどの業務システムの導入が早くから進んでいたのです。ですから次の取り組みとして、ソフトウェアロボットによる業務改善を検討することは難しくなかったのです。

5. 「ドイツ」「RPA」におけるキーパーソンとその活動

RPAという言葉が提唱される前からドイツではRPAの研究開発がスタートし、その後RPAがドイツ企業でも急速に導入されていきました。

ここで3人のキーパーソンを紹介します。

1.Olaf BAUNACK氏 (ATOS社戦略業務開発部門担当のVP)

Baunack氏は、ITビジネスおよびアウトソーシングにおいて20年以上の管理およびコンサルティングの専門知識を持っています。前職のAlsbridge GmbH社のマネジングディレクター時代の2016年には、RPAの未来の姿を次のように述べました。「RPAはまず人間から学ぶことから始めますが、最終的には人間の介入を必要としなくなります」。

2. Stefan GÖSSEL氏 (Leadvise Reply社マネージングダイレクター)

GÖSSEL氏が経営するLeadvise Reply社は、大企業を対象とする経営コンサルティングを生業としています。GÖSSEL氏は早くからRPAのエバンジェリストとして多くのメディアに露出し、CeBITのようなグローバルイベントで、RPAに関する講演を多く行なっています。

3. Prf. Dr. August Wilhelm SCHEER 氏(Scheer Group創業者)

Scheer氏はBPMの創設者として、ドイツのみならず世界で知られています。1984年に世界初のBPMソフトウェア企業のIDS Scheer (現Software AG)を設立し、業務システムの導入の成功にはBPMありきであることを、ドイツのみならず世界に知らしめました。

Scheer氏はRPAとBPMの関連性について、次のように述べています。「RPAの背後にはビジネスプロセス自動化への、新しいアプローチが隠されています。 RPAは企業が日常的なビジネスプロセスの実行を自動化することを可能にし、ビジネスプロセスに付加価値を与えるのです」。2017年からはRPA+BPMの講演をドイツ中心におこなっています。同氏がファンドするAWSi社とScheer GmnH社は、ドイツ中心にPRAを推進しています。

6. 「ドイツ」での「RPA」の今後の展望

RPAはすでに多くのドイツ企業のサービスデスクやカスタマーケアセンターなどの部署で、日常業務において向上したサービス品質を保証し、週7日24時間の利用を可能にしています。今後はさらに業務プロセスが自動化され、最適化された監視プロセスも最適化されると考えられます。つまり詳細な評価とリアルタイムの報告により、コンプライアンスの監視や、ITサービスプロバイダの監視が容易になるということです。

RPAを構成する要素技術の向上により、今後より一層ホワイトカラー業務の効率化や自動化が進むと予想されます。定型作業についてはRPAが業務が完結できるようになり、さらには人間の判断が必要とされる非定型作業の自動化も、EAP, CAの実装により実現されると考えられます。

今後ますます労働者の不足が予想されるドイツにとって、RPAが有効な代替手段となり、海外にBPOしていた業務を、RPAがドイツに取り戻すことも大いに考えられます。

競争上の優位性をRPAで生み出すために、多くのドイツ企業では今後3年間でRPAに割り当てる予算を大幅に増やす予定であると言われています。

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