Made in China 2025は本当に世界にとって脅威なのか

Made in China 2025は本当に世界にとって脅威なのか – 記事

Made in China 2025は2015年に中国政府により発表された戦略的指針で、中国の経済戦略と成長モデルを次の10年間でアップグレードすることを目的としたものです。この計画には5つのカギとなる優先分野があり、これらは(1)イノベーションの加速化、(2)製品の品質及びサービスの向上、(3)環境に配慮した持続可能な生産技術と再生可能エネルギーの向上、(4)産業や企業の構造転換を促進、(5)人的資本および才能開発への投資、です。

競争力強化のために中国がとった手段とそれが中国にもたらしたもの

大量生産で安価な粗悪品を製造する国から、高品質で国際競争力のある製造業を作り出すという目標を達成するために積極的に行われたのが、中国企業による外国企業のM&Aです。
情報産業、ロボット技術、宇宙・航空技術などの分野でのM&Aが盛んに行われ、これに危機感を覚えた欧米各国が中国企業による買収に規制を設ける動きも出ています。

特にアメリカでは、大統領が中国による中国政府を後ろ盾としたアンフェア・トレードを問題視し、強固な制裁関税を盾に貿易不均衡の解消を図ろうとしています。
しかしこの動きに対して中国国内では、“貿易不均衡”を言い訳にしたアメリカによる、中国が国際貿易舞台で強力な地位に上り詰めるのをブロックするための画策である、とする見方が多いようです。
外国企業の買収に関しても、中国の監査当局は、海外企業のM&Aによる資本流出や、それに伴う人民元安のリスクを懸念し、規制を強化し始めています。実際、2017年のM&Aは金額ベースで2016年度よりも40%以上減少しています。逆に中国国内の同業同士によるM&Aの金額は前年比14%と増加傾向が見られました。

そもそもMade in China 2025構想はなぜ生まれたのか

2018年9月11日付のサウスチャイナ・モーニングポスト電子版は、中国がMade in China 2025計画を進める背景には、近年の画期的な経済成長の陰で中国経済が直面する問題について言及しています。
規模は大きいものの経済力は弱く、特に製造業では、靴やおもちゃなどの粗悪品の輸出が落ち込み、ボトルネック状態となっていました。これを打開するにはハイテクを導入するしか道はなかったのです。

1979年に始まった一人っ子政策の影響で少子高齢化が進み2030年までには労働可能人口が大幅に減少する見込みであることも、危機感に拍車をかけました。
2018年12月28日付のChina Briefing電子版では、Made in China 2025が他の国家的計画と異なるところは、直接的または間接的に、国家が広範な支援を行うということ、そしてノウハウの獲得を意図したところにあると指摘しています。
Made in China 2025が重視しているのは、主要な部品や材料の国内含有量を増やすことです。この分野を2020年までに40%、2025年までに70%に拡大することを目標としています。世界経済での覇権を目指すというよりは、まず国内産業の自給自足を実現することに主眼を置いていると強調しています。

Made in China 2025と米中貿易摩擦

米中間の貿易不均衡は、2017年に過去最高を記録し、中国製品のアメリカへの輸入とアメリカ製品の中国への輸出の差額は3752億ドル(前年から282億ドル上昇)の輸入超過となりました。これがアンフェア・トレードであるとして、アメリカ政府の攻撃のもととなっています。さらに、Made in China 2025を推し進める中国が、ハイテク分野で強力な競争相手となることへに対しても、大きな脅威を感じています。
又、政府による産業保護・支援や外国企業が中国市場に参入する際には現地企業とジョイント・ベンチャーを組まなくてはならない仕組みによる技術の流出も懸念しています。

2018年4月16日には、アメリカ商務省が中国の電話電信の最大手ZTEへの輸出特権を7年間にわたって拒否すると発表しました。このような規制が益々中国を自給自足生産へと向かわせています。同時に報復措置として、中国独占禁止法規制当局は、米国のチップメーカーであるクアルコムとオランダのライバルNXPとの間の合併計画に対して、独占禁止法違反を理由に異議を唱えました。アメリカが中国への技術流入を規制しようとすればするほど、中国からは独占禁止法を根拠とした法的措置に訴えられる可能性が高くなってくることでしょう。

トランプ政権の主張は、中国政府が国内産業の保護・支援を行うことで、アメリカに対する貿易不均衡が助長されている、というものですが、これは中国に限らず新興国がスーパーパワーに追いつくために用いる常套手段で、アジアでも日本や韓国、シンガポールなどはこの手段で経済力の強化を図ってきました。アメリカ主要メディアのワシントンポストは、アメリカ自身が発展途上期にはこの手法を用いて国家経済の強化を図って来たと論じているほどです。
現在両国が展開している関税競争にしても、中国から輸入される原材料への高関税はアメリカ国内の生産業にも大きなマイナスの影響をもたらすことは必至で、原材料の高騰によるアメリカ製品の価格上昇を招くことは避けられません。

世界第2位の貿易大国に躍進し経済大国と称されるようになったとはいえ、中国はまだ新興国から脱することができていません。国民一人当たりの平均所得は、アメリカが56,000ドルであるのに比べわずか8,000ドルにしかすぎません。先進国のレベルに達するには、さらなる努力を必要としています。習近平国家主席の安定的な長期政権が確立され、中国共産党結党から100年にあたる21年に『小康社会(やや、ゆとりのある社会)』を実現するために中国が国を挙げての取り組みを継続することは明らかでしょう。

≪参考資料≫
http://www.china-briefing.com/news/made-in-china-2025-explained/
https://www.washingtonpost.com/news/monkey-cage/wp/2018/05/03/what-is-made-in-china-2025-and-why-is-it-a-threat-to-trumps-trade-goals/?noredirect=on&utm_term=.602e86b8b92c
https://www.scmp.com/comment/insight-opinion/article/2152674/why-made-china-2025-should-scare-donald-trump-less-those
https://www.forbes.com/sites/joelbackaler/2016/04/18/chinese-companies-choose-ma-to-accelerate-international-expansion/#e5baf857eac2
https://multimedia.scmp.com/news/china/article/made-in-China-2025/index.html
https://www.nytimes.com/2018/02/06/us/politics/us-china-trade-deficit.html
https://www.washingtonpost.com/news/monkey-cage/wp/2018/04/24/trump-doesnt-like-chinas-economic-nationalism-so-why-is-his-administration-stirring-it-up/?utm_term=.e9cefdfe1e81

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