フランスにおける「インダストリー・ルネサンス」の歴史:定義や概念、また今後の展望 – その②

フランスにおける「インダストリー・ルネサンス」の歴史:定義や概念、また今後の展望 – その② – 記事

1. 「インダストリー・ルネサンス」を使用した企業向けサービス

産業構造が大きく変わり、新しい産業革命であるインダストリー・ルネサンスが到来したと提言している仏ダッソーシステム(以下ダッソー)は、世界最大のバーチャル工場でありビジネスエクスペリエンスプラットフォームである、3DEXPERIENCE プラットフォームを提供しています。

企業のあらゆる部門の価値創造プロセスにおいて、差別化されたエクスペリエンス(ユーザー体験)を創造する様々なソリューションを提供し、デジタル改革を目指す企業とサービスプロバイダーの橋渡しをしています。この取り組みこそがインダストリー・ルネサンスのビジョンであるとしています。

3DEXPERIENCE プラットフォームは世界中の認定を受けたサプライヤーで構成され、企業規模を問わず、業界をリードする様々なアプリケーション (デザイン/エンジニアリング、製造/生産、シミュレーション、ガバナンス/ライフサイクル、プロフェッショナル向け3Dデザイン・エクスペリエンス、様々なサービス) を、3DEXPERIENCE プラットフォームを基盤として提供しています。

企業の欲しい製品が簡単にみつかり、導入ができるサービスプロバイダーもプラットフォーム上で選択ができます。当初大企業向けでしたが、中小企業向けのソリューションを買収し、3DEXPERIECE プラットフォームに搭載したので、今では大企業だけでなく中小企業にも対応したサービスです。もちろんサービスプロバイダー同士の様々な協業が可能になります。

3DEXPERIENCE プラットフォームはデジタル設計、エンジニアリング、製造に関わる商取引のためのクラウドベースの新しいプラットフォームとして、製造業に変革をもたらすことを目指したサービスです。そして3DEXPERIENCEプラットフォームに参加することで、企業とサービスプロバイダーどちらも新たなバリューを得られます。

2. 「インダストリー・ルネサンス」を使用した消費者向けサービス

インダストリー・ルネサンスでは消費者は単にサービスを享受するだけでなく、創出へのコントリビューターでもあるとされています。

ここで個人向けサービスの例として、ダッソーが提供するHomebymeをご紹介しましょう。Homebymeは、オンラインのインテリアデザインアプリケーションです。住宅に関するアイデアを3Dで視覚化することができます。 まずはウェブサイトのアプリ上で2Dベースの設計図を引きます。もちろん実際の設計図データをインポートすることもできます。そこにドアや窓などの要素を設置して、次にそれを3Dとして表示すると正確な空間プランニングが行えます。Homebymeでは現実的な製品のコストの確認や、何千もの色や材料から自分のアイデアを現実化することができます。フォーラムサイトでは専門家のアドバイスも聞くことができますし、さらに友人や家族にプロジェクトの進捗をバーチャルに共有できるので、共有された側もイメージが描きやすくアドバイスがより明確になるため、住宅を購入しようとしている人にとっても決断がしやすくなります。

3.「インダストリー・ルネサンス」導入企業例

インダストリー・ルネサンスは、すでにグローバルベースで始まっていて、今後はさらに加速するとダッソーは予言しています。その実例としてダッソーでは「業界」「ソリューション」「消費者」という3つの要素に分け、この変革によって生まれる新たなカテゴリを例示しています。

「業界」では誰もが知る大企業である米ボーイングと、フランスのスタートアップのXYTの2社が業界に新たなカテゴリーを生み出した、あるいはこれから生み出すとしてあげられています。

コンピュータ上で3次元モデルを構築してデジタルモックアップ(DMU)を作れば、いちいち木を切ったり削ったりつないだりして、巨大な実大模型を作らなくても済むのですが、1990年にボーイングはいち早くこのDMUを活用し、ボーイング777を開発しました。ボーイング777はその機体すべてがコンピュータ上で設計された、世界初の商用航空機でもあります。それまで8年かかっていた開発期間は、DMUによって5年に削減され、設定変更は50%減になりました。

一方のXYTは電気自動車を手がけており、コネクティッドカーとしての開発を進めています。既存メーカーの自動車の部品点数が6000-10000点であるのに対し、XYTではわずか600点あまりの部品だけなので、素早く作り上げることができるなどの特徴も持っています。XYTは自動車に対してモジュール設計アプローチを採用しており、消費者はモジュール化された構成部品を交換するだけで、購入した車両のパーソナライズ化やアップグレードを簡単に行えます。

「ソリューション」では新国立競技場などを手がける著名建築家の隈研吾氏の作品が、新しいカテゴリーを生み出した例としてあげられています。空気浄化繊維を使って折り紙のように作られた構造体で、9万台分の排気ガスを1年で吸うことのできる設計は、環境技術を見える化したものといえるでしょう。類似する例ではフィンランドのTactoTekが開発したスマートサーフェスも、顧客の体験を形作る新たな手段であるとされます。

そして「消費者」では、前述のHomebymeがあげられています。

ダッソーではこれらの3つの例示を経て、

「インダストリー・ルネサンスの中心にあるのは知識とノウハウであり、そのインフラとなるのが同社の3DEXPERIENCEプラットフォームだ。」

と述べています。そしてこれは

「オペレーティングシステムであり、ビジネスモデルでもある。」

と言及しています。

4. 「インダストリー・ルネサンス」の今後の展望(企業側の変化)

生き残りをかける企業はインダストリー・ルネサンスの到来で、自らのビジネスに新しいカテゴリーを作っていくことが必要となりますので、そのためには今まで提携することが考えられなかった企業とのアライアンスが進むと考えられます。さらには企業と消費者の距離感ゼロを目指す必要が生じますので、いかに消費者のニーズを効率的に吸い上げ、個別対応するかが課題になります。
これまでの製造業では既存のソリューションを用いて、未来の問題を解決しようとしてきましたが、これからは未来の顧客が求めるものを予測し、製品をつくっていく必要があるのです。
そして消費者が欲しいものが、よりタイムリーに市場に投入されていくことになります。

5. 「インダストリー・ルネサンス」によって今後どんな暮らし方になっていくのか(消費者側の変化)

バーチャル空間を利用した個人向けサービスが拡大し、業者に出向いたり、電話で問い合わせしなくても、プラットフォーム上で必要な情報を全て共有し選択できるようになることが考えられます。店頭販売する店舗はなくならないものの、支払い方法や店舗内サービスに関する顧客エクスペリエンスが進化することでしょう。

個人一人一人に合わせた、顧客エクスペリエンスの個別化は進み、自宅ではセキュリティが保たれ、自動車、輸送機械、モビリティ業界は自動化やコネクト化が進むと見られるので、コストの削減や生活の質の改善が期待できます。

パーソナライズ化されたバーチャルホームアシスタントや家庭用ロボットの実用化や、スマートホーム化も進み、パーソナライズ化された予防医療や在宅治療はあたりまえになることでしょう。