中国における「インターネットプラス」の歴史:定義や概念、また今後の展望 – その②

中国における「インターネットプラス」の歴史:定義や概念、また今後の展望 – その① – 記事

1.「中国」にて「インターネットプラス」によるIT企業の取り組み

インターネットプラスとはモバイルインターネット、クラウドコンピューティング、ビッグデータ、IoTなどの新しいインターネット技術とほかの産業が結びつくことで、インターネットプラス 医療、インターネットプラス 物流、インターネットプラス 金融などのように、従来の産業の新たな発展の推進を目指すものです。中国では個人消費者向けのインターネットサービスが爆発的に先行していますが、企業においてもインターネットプラスが発表されてからそのビジネスプロセスに変化が生まれています。

2017年に貴州省貴陽市で開催された中国国際ビッグデータ産業博覧会で、中国ITの大手企業トップが顔を揃え、各社の取り組みを発表しました。

シャープの親会社のホンハイ (Hon Hai Precision Industry)は、自社の貴州省の工場でビッグデータ解析と高精細画像を組み合わせた生産管理システムを導入し、工場内や工場間の物流を効率化する計画を表明しました。

アリババ (Aribaba)ではビッグデータを使って資金を効率的に運用する、金融サービスを提案しました。

テンセント (Tencent)では地方政府向けに、地区別の人口動態や企業の運営状況などのビッグデータを収集して、効率的な都市経営を実現する仕組みを発表しています。

ここで話は少し変わりますが、インターネットプラスの推進には、堅牢なセキュリティ環境が必須です。チーフーサンロクマル(Qihoo 360 Technology) は公安省と協力して、航空やエネルギーのシステムにサイバー攻撃をする実験を行い、セキュリティの脆弱性が深刻なことを明らかにしました。中国政府と共同でビッグデータ関連の安全性を高める研究を手掛ける研究設備も設けるなど、セキュリティー分野での動きも活発になってきました。

2. 「中国」にて「インターネットプラス」を使用した消費者向けサービス

中国モバイルペイメント業界で、50%超のシェアを誇る、アリババが展開する世界最大のモバイル決済サービスのアリペイ(Alipay) は、日本でもセブンイレブンやローソンなどのコンビニで導入が始まっており、テンセントグループのウィーチャットペイ(Wechat Pay)とともに、今後日本のデパートやコンビニ、ドラッグストアなどで目に触れる機会が多くなりそうです。

バイドゥ(Baidu)、アリババ、テンセントは、中国でのインターネットサービスのほぼ全領域を網羅しており、中国で生活するうえでなくてはなくてはならないサービスに成長しています。今や老いも若きも中国人であれば、誰もが利用しています。

QRコードの爆発的な普及も見逃せません。請求書にプリントされたQRコードを読み取って、銀行口座に連携しているモバイル決済サービスで支払いを済ませたり、店頭ではQRコードを店員に提示して支払うなど、日本より数段進んでいます。

中国では欧米のようにクレジットカードが普及していませんので、スマートフォンなどによるモバイル決済サービスが生活に欠かせないツールになっています。そのためほぼ全てのインターネットサービス企業がモバイル決済サービスを提供しており、いわゆる「スマホ決済」が中国ではどこでも可能になっています。財布を持ち歩かなくてもスマホアプリの利用で買い物、食事、映画鑑賞やタクシー乗車が出来る生活を、中国ではいち早く実現しています。

3. 「中国」での「インターネットプラス」導入企業例

中国というお国柄から企業向け事例の公開がとても少ないので、今回は中国政府が後援して進めている貴州茅台酒 (Kweichow Moutai Co.,Ltd., 以下マオタイ)のビッグデータ導入予定について紹介します。

茅台酒を生産するマオタイでは、2017年から自社をスマート化するプロジェクトである、スマートマオタイを進めています。貴州省は中国政府のビッグデータ産業重点地区なのですが、その貴州省を代表する企業であるマオタイは、貴州省および酒造会社のモデル企業として、中国政府のバックアップを受けています。

マオタイではビッグデータを活用して、社内管理やサービス体制などの企業環境を改善していく予定です。スマートマオタイが稼働して全工場の状況が一度に把握できるようになれば、商品の生産から販売まで一元管理が可能になり、中国全土の代理店の販売状況の分析やそれと同時に、フェイク(ニセ酒)の流通の歯止めもできるようになるのです。

スマートマオタイの今後はビッグデータプラットフォームを開発した後、2019年には経営や生産用にそのプラットフォームを活用したアプリを開発し、2020年には情報をオープンプラットフォームで開放する予定です。

4. 「中国」での「インターネットプラス」の今後の展望(企業側の変化)

欧米ではすでに企業の6割超がクラウドサービス(パブリッククラウド)を利用しています。しかしながら中国では2割ほどです。O2Oなど個人向け向けのインターネットサービスは、インターネットプラスの発表後間もなく急成長したのに、企業向けのインターネットの利活用が進まない背景には、中国にはまだ非効率な業務が多く残っているため、第三者に自社のデータを簡単には委ねられない事情があるのです。もちろんクラウドサービスはインターネットプラスの重要キーの一つですので、クラウドサービスの導入も中国政府の号令とともに進むことでしょう。非効率な部分が多いからこそ、導入が進めば大きな効果がすぐに期待出来るともいえます。

中国製造2025との連携もありますので、中国のインターネットビジネスは引き続き推進され、どんどん新しいサービスが出てきます。今後も画期的なスタートアップが生まれ、世界を驚かせるかもしれません。中国の既存企業がスタートアップと連携することも増えますし、巨大な中国企業が海外のインターネットビジネスのスタートアップを買収することも増えることでしょう。

5. 「中国」での「インターネットプラス」によって今後どんな暮らし方になっていくのか(消費者側の変化)

中国では春節(旧正月)が近づくと、顔認証メガネをかけた警察官が目につくようになります。驚くことにこの顔認証メガネをかければ相手の身元がすぐに確認できて、祝賀行事などで犯罪を未然に防ぐことができるのです。中国では既に身分証明証を使わない本人確認が浸透しています。アリババの関連会社のアント・フィナンシャルが始めた「スマイル・トゥー・ペイ (smile to pay)」では、カメラに自分の笑顔を映して電子決済の認証を受けます。中国では顔認証により、IDカードを使わなくても学生が大学の講堂に入ったり、旅行者が飛行機に搭乗したり、社員がオフィスに入ることが簡単にできるのです。

中国公安部ではさらにこの状況を進化させて顔認証システムと監視カメラを使って、いつでもどこでも完全にインターネットに接続し、完全にコントロールされたネットワークの実現を目指す計画を明らかにしています。これを受けて中国の民間企業や顔認証分野のスタートアップは、不正行為や犯罪行為を監視するためのソリューションを次々に開発していきますので、それらが本番稼働を迎えるごとに、不正や犯罪が減っていき、よりセキュアな中国が実現していくかもしれません。

中国の衆安保険では、糖尿病患者を対象とした新しい医療保険を提供しています。これはテンセントが開発したタッチパネル式測定端末で血糖値のデータを取り、規定値を下回れば、保険金が増額される仕組みです。これにより人々はこれまでより健康管理を心がけるようになり、医療費や医療保険の支払いが節約できると言われています。こういった取り組みが各業界で増えていけば、
より安全な暮らしが期待できますが、同時にプライバシーが侵される危険もあるのですが、中国の人々はまだそれほど強い危機感は持っていないようです。