ドイツにおける「インダストリー5.0」の歴史:定義や概念、また今後の展望 – その② | インダストリー5.0

ドイツにおける「インダストリー5.0」の歴史:定義や概念、また今後の展望 – その② | インダストリー5.0 – 記事

(おことわり)本文書は主にドイツの情報を参考にして作成しておりますが、インダストリー5.0はドイツでも未だ確定していないコンセプトであることを、あらかじめご了承いただいた上でご覧下さい。

1. 「ドイツ」で「インダストリー5.0」が企業に及ぼす影響度

インダストリー5.0は人と機械との確固たる相互作用で展開されるとみなされています。これはドイツに限ることではないのですが、RPA (Robotics Process Automation =ロボティクス・プロセス・オートメーション) は製造業であればどこの企業も注力している分野です。そしてRPAがインダストリー5.0の進化を強く後押しすることは間違いありません。

近い将来ロボットは単純作業のほとんどを人間から引き継ぐことができるようになります。それだけではなく人間が想定すらしてなかった膨大な生産量を達成し、サービスを適正に変更していくでしょう。

その試験的取り組みとして、ドイツのpi4_robotics社は従業員はロボットだけという工場を稼働させています。ロボットの一時的な雇用機関をも試験的に設けています。

今後ロボットやシステムなど、いわゆるAIを搭載した機械そのものが自身を調整してエネルギー消費を最適化することができるようになるでしょう。しかしこの未来に対し人間は喜んでばかりはいられません。

単純作業をしていた人間はAIがまだ踏み込めない領域のスキルをつけない限り、職を失い路頭に迷うことになることが想定できます。そしてAIはいずれ人間を超える知性を持つようになります。

少子高齢化が進む社会において、人間の安定した生活水準を守るためのインダストリー5.0でもあります。人間とAIの両方が常に存在しなければならないビジネスプロセスはもちろん排除すべきですが、AIとの業務分担を明確化しない限り、AIと人間の立場が並列になり、いずれは逆転してしまい、人間が職を失うことになってしまう脅威が待っています。

2. 「ドイツ」での「インダストリー5.0」ケーススタディ・ユースケース

インダストリー5.0においてはロボット機能が中心的だったインダストリー4.0とは異なり、ヒューマンインテリジェンスを持った産業ロボットが核となります。

ここで独Roth市の取り組みを紹介しましょう。Roth市では企業のデジタル化を推奨し、多くの企業ではそれを遂行しています。Roth市のMangelberger Elektrotechnik GmbH (以下Mangelberger社)では、中堅企業では通常43時間かかる制御盤の設置を、他社と共同開発した自動ロボット生産技術を使うことで、1/10の時間で行えることとなりました。同社社長のMangelberger氏のビジョンは、ビッグデータやロボット工学のエキスパートから高い評価を得ました。さらに特筆すべきはMangelberger社ではコピーを防止するための、世界で唯一のUSP (Unique selling proposition = 独自の売りの提案)を保持していることです。Mangelberger社はその功績から、バイエルンイノベーション賞(= Bayerischen Innovationspreis)を受賞しました。

Roth市ではMangelberger社を一例とする”made in Bavalia (=メード・イン・バイエルン州)”と命名された自動化、デジタル化プロジェクトによって、同市の中小企業の多くでは、アジアの競合他社の低品質の製品よりも、コストパフォーマンスよく生産できるようになったと述べています。

加えてRoth市は継続的に収集して通信するシステムである「スマートデータ」によって、世界的に普遍的な通信が可能になる実例をも持つ、先進的なスマートシティです。

3. 「ドイツ」での「インダストリー5.0」が消費者の生活に影響することとは

AIやロボティクスの進化で製造工場での単純作業が人の手を離れていくことは、インダストリー4.0の段階で想定されていました。

しかしながらインダストリー5.0でAIはさらに人間に近しい知性を持つようになり、ものづくり分野だけではなく、様々な分野で単純作業を人から引き継ぐことになりますので、人間は単純作業から解放されはしますが、ややもすれば大きな失業率を生むことは歓迎できることではありません。

自動運転車や介護ロボットの進化、無人店舗の増加などは、少子高齢化の世界では望まれた状況であり、生活水準もあがることでしょうが、住み分けのルールがないままでは、まもなく能力で超えられないAIが人間にとって脅威となり、競合となるでしょう。

4. ドイツのインダストリー5.0への各国からの反響は

インダストリー5.0について、他の先進諸国のエキスパートはどのように考えているのでしょうか。イギリスとアメリカのエキスパートのコメントを紹介しましょう。

英High Value Manufacturing Catapultの元最高技術責任者あるPhill Cartwright氏は、インダストリー5.0がパーソナライゼーションの概念を、次のレベルに引き上げると述べています。それは製品の一つのサイズが顧客全てのニーズにフィットするものではないので、それを個別にカスタマイズするためにAI技術が進化することを指しています。そして製造プロセスをより自動することで、現場からリアルタイムのデータが入手でき、人間はそれぞれの顧客のために別々の製品を簡単に作れるということがインダストリー5.0でのパーソナライゼーションの概念ということです。

Carwright氏はイギリスはインダストリー4.0では他国に遅れをとった感があるが、インダストリー5.0では主導的な位置につけると確信しているようです。

米Rethink Robotics社のJim Rawton氏は、インダストリー5.0では人間と機械がまさに調和するフェーズであると考えています。さらにロボットの自動化が進み、ビジネスニーズに合わせてスケールアップあるいはスケールダウンが可能になり、信頼できるレベルの品ひつと生産性が維持できるようになると述べています。

そしてデジタル化と自動化の革新により、柔軟で機敏なレスポンシブなプロダクション環境への障害がついになくなるであろうと述べています。

5. 「インダストリー5.0」の先にあるものは

最後にグローバルベースの実話を一つご紹介しましょう。

Google DeepMindによって開発された囲碁プログラムのAlphaGo (Alpha碁)は、2016年に李世乭 (Lee Sedol)との5番勝負で3勝挙げ、韓国棋院から名誉9段を授与されました。そしてすでに翌年2017年には、AlphaGo を上回る改良版のAlphaGoZeroが生まれています。まさにすさまじいとしか言いようのない速度です。

もっともGoogle DeepMindは、AlphaGoが世界トップ棋士の李に勝利したところで、AlphaGoを人間との対局から引退させました。それはAlphaGoが勝ち続けることで、それまでテレビでプロ棋士の対局を見るのを楽しみにしていた人々が対局番組を見なくなれば、テレビ局、広告、タレントそして棋士にも大きなネガティブな影響を及ぼすのを避けたいからです。つまり人間とAIの間の明確な区別がつかない時代になる準備が、まだできていないための対策ということがわかります。
人間のために開発されたAIが人間の最大の敵にならないためにも、ドイツのみならず全ての国では技術を進化させることだけに注力せず、人間とAIの住み分けを明確化させることが望まれます。

インダストリー5.0の先には何があるのでしょうか。まもなくインダストリー6.0という概念が聞こえて来るのでしょう。次は農林漁業の活性化が想定されており、しかもあまり遠い話でない可能性があります。