ドイツにおける「インダストリー5.0」の歴史:定義や概念、また今後の展望 – その① | インダストリー5.0

ドイツにおける「インダストリー5.0」の歴史:定義や概念、また今後の展望 – その① | インダストリー5.0 – 記事

(おことわり)本文書は主にドイツの情報を参考にして作成しておりますが、インダストリー5.0はドイツでも未だ確定していないコンセプトであることを、あらかじめご了承いただいた上でご覧下さい。

1. 「インダストリー5.0」の言葉の意味・定義

2020年までにAI(Artificial intelligence = 人工知能)が、人の知性を超えるとされています。

AIの世界的権威であるRay Kurzweiz氏が2005年に彼の著書である”The Singularty Is Near”で、2045年までにAGI (Artificial general intelligence = 汎用人工知能) や、基本能力は現在の人類に比べ極めて優れていて、もはや人間とは呼べない仮説上の未来種であるポストヒューマンが、人の役割を完全に引き継ぎ文明の進歩の主役になるという、未来学上の概念であるシンギュラリティ(Singularty->技術的特異点)が到来するという説を発表しましたが、2018年が終わった段階でその中のかなりの部分が的中していることが確認されています。人類と機械の間の明確な区別がつかなくなる時代が、すぐそこまできているのです。

時代はITからICT (Information and communication technology)に変化し、世界最先端のIT国家を目指したドイツ政府は、2011年にドイツの第4次産業革命である国家戦略的コンセプトのインダストリー4.0を発表し、物質文明の代表である製造業を根本的に変える戦略を世界に示しました。

インダストリー5.0とは製造業にフォーカスしたインダストリー4.0の流れを引き継ぐ、ドイツの第5次産業革命の概念です。シンギュラリティが到来する前段として、バイオニクス、合成生物学などがAIとの融合によってエンジニアリング、化学そしてエネルギー産業など、製造業以外の産業をも進化するとされています。ブロックチェーンとAIの組み合わせもさらに進むと考えられています。
インダストリー4.0と比較すると、インダストリー5.0は経済や製造への影響だけでなく、市民社会、ガバナンス構造、および人間のアイデンティティへの影響を含んだ、良いも悪いもより体系的な変革といえます。

2. 「インダストリー5.0」という「言葉」が初めて使われたのは

インダストリー5.0という用語はインダストリー4.0が発表された4年後の2015年12月に、ビジネス向けSNSのLinkedinに掲載された、Michael Rada氏のFrom virture to phisical (仮想から物理へ)という記事で最初に使われました。

その中でRada氏はインダストリー4.0ではスマート、IoT、データ、データ保護といった仮想環境の世界で機械や製品が互いに通信、制御そして管理し合えるようになったので人間が徐々に排除されていくかのようだったが、製造業に最高の量産をもたらしたことを言及し、インダストリー5.0は仮想概念を物理的に実行するフェーズであり、人間に高い生活水準、創造性、多様性をもたらし、インダストリー5.0は革命というだけではなく進化であると述べました。

3. 「ドイツ」で「インダストリー5.0」の概念が生まれた背景

すでにお話した通りインダストリー4.0では仮想環境での概念レベルでしたので、その物理的な実装のためインダストリー5.0の発表が望まれましたので、インダストリー4.0からインダストリー5.0はインダストリー4.0の発表後たった4年という短期間で生まれたわけです。

またインダストリー5.0が人間と働くロボットの、初のビジネスモデルとなるともいわれていました。

4. 「ドイツ」「インダストリー5.0」におけるキーパーソンとその人の活動

インダストリー5.0は、未だ先に意見を言ったもの勝ちの状況ではありますが、すでに紹介したMichael Rada氏以外にも、その核となる考えを発表している人々がドイツには多くいます。その中で3名を紹介します。

1.Karl-Heinz Land 氏 (独Neuland創業者)

Land氏は戦略コンサルティングの専門家であり、戦略コンサルティング会社であるNeulandのオーナーです。彼の著書であるERDE 5.0 – Die Zukunft provozieren (Earch 5.0 – 未来を刺激する)でインダストリー4.0の結果である急激な変化の中で生き残るために企業ではどう対応するか、つまりビジネスモデルや製品の発表をどのように変えるかの理解を示唆しています。さらに国家や企業の間違った方向性を指摘し根本的な解決のためには革新的なソリューションの必要性を説い、インダストリー5.0を明示しています。

2. Marco Luebbecke 氏(独アーヘン工科大学大学教授、専門はオペレーション分析)

インダストリー5.0がRada氏によって初めて使われたタイミングとほぼ同時期に、Luebbecke氏はデジタル化とネットワーキングだけで得た情報では不十分であるので、数学的アルゴリズムを加えたインダストリー5.0 の必要性を発表しました。その後2017年2月に、学術的な立場で、”Industrie 5.0~Kommt die mathematische Revolution? (インダストリー5.0~数学的革命は来るのか?)”という題目で講演を行い、その資料をウェブサイトで公開しました。

なおLuebbecke氏が教鞭を取るアーヘン工科大学では、中堅中小企業に対して電気自動車の開発など具体的なテーマを設定したOJTラボで、IoTやインダストリー4.0に関するエキスパート教育を行なっていることでも知られています。

3. Roman Retzbach 氏(独Future Intelligences CEO)

Retzbach氏は、未来学における世界的リーダーでドイツを拠点とする起業家です。彼もまたインダストリー4.0からインダストリー5.0への移行を早い段階から予測していた一人です。講演を通して多くの国にその考えを広めており、著作も多くあります。

5. 「ドイツ」での「インダストリー5.0」の今後の展望と課題

具体的にインダストリー5.0は何をもたらすのでしょうか。ロボットは本当に人間並みの仕事が何でもできるようになるのでしょうか。

現在ドイツではロボットが人から看護作業を引き継げるか、あるいはロボットに幼稚園の先生ができるかなどを調査しています。ちなみに日本では部分的に同じ作業にロボットが稼働を開始していますが、ロボットが人を支配する時代がやって来るのでしょうか。

インダストリー5.0の優先事項は相乗効果のある環境で、機械と人間の労働力を効率的に利用することです。それには仮想から物理(現実)に移行し、概念が本番稼働することが必要です。

インダストリー5.0はその効果としてコスト削減、環境保全、そして高品質の製品を顧客ごとのニーズに合わせての生産を可能にするための効率的な作業環境の実現が想定できます。特に効率的な作業環境の観点ではロボットを使いこなすことで、作業者に適切な年齢層という概念がなくなり、経験豊富なシニアの熟練ワーカーの活躍の場が増えるでしょう。

しかしながら良いことばかりではありません。次の点を認識し、必要な改善と対応をしないことにはインダストリー5.0は成功しないでしょう。

  • 社会とビジネス環境の急激な変化によって引き起こされる法的問題の増加
  • 低、高レベルの高齢化社会
  • 過剰生産
  • 透明性の欠如
  • 善を偽って悪を行う「間違ったツール」の適用
  • ITと電力への依存
  • インダストリー5.0に伴う変化に消極的な関係者のメンタリティ

イノベーションと技術の進歩は、これまで明確なパターンをたどってきました。まずイノベーションを集中的に使用し、次にネットワーキングを使用して分散配置するという方法です。これには次の革新、つまりインダストリー6.0につながっていくのです。

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