日本における「Society 5.0」の歴史:定義や概念、また今後の展望 – その② | ソサエティ5.0

日本における「Society 5.0」の歴史:定義や概念、また今後の展望 – その② | ソサエティ5.0 – 記事

1. 「日本」にて「Society5.0」を使用した企業向けサービス

総合科学技術会議は2001年1月の中央省庁再編に伴う、重要政策に関する会議の一つとして内閣府に設立されましたが、内閣総理大臣のリーダーシップのもとに化学技術のみならずイノベーション政策の司令塔としての任務を担い、2014年に総合科学技術・イノベーション会議(Council for Science, Technology and Innovation=CSTI)と名称変更しました。

Society5.0の実現に向けてCSTIが中心となり、Society5.0のモデル化の推進を開始しました。現在はCSTIと連携した戦略的イノベーションプログラム(Cross-ministerial Stragegic Innovation Program=SIP)と革新的研究開発推進プログラム(Impulsing Paradigm Change thruough Disruptive Technologies Program=ImPACT)は政府から予算を得て、多くの具体的な課題に取り組んでいますが、東京オリンピック、パラリンピックが開催される2020年を、Society5.0の成果を示すひとつのめどとしています。大会後にはSociety5.0の概念を使用した企業向けサービスが増えていくことが予想されます。

今後実装が予定されている、企業向けサービスを2件紹介しましょう。

東京オリンピック、パラリンピックに向けた取り組み

SIPの自動走行システム課題ではその責任者であるトヨタ自動車が、東京オリンピックの選手村で、無人電気自動車のeパレットの走行を予定しています。2017年に沖縄での自動走行バスの実証実験を行い、現在は東京オリンピック本番に向けて大規模実証実験を行っています。

また情報セキュリティ大学院大学を責任者としたSIPのサイバーセキュリティ課題では、東京オリンピック、パラリンピック競技大会に向けて通信や放送、エネルギー、交通システム等の重要インフラをサイバー攻撃から守るための制御、および通信機器の真贋判定技術(機器やソフトウェアの真正性や完全性を確認する技術)を含めた動作監視および解析技術と防御技術を研究開発し、安全で安心な大会運営に貢献することを目指しています。

次世代素材の開発

ImPAPTのプログラムマネージャの一人である鈴木隆領氏は、ものづくりに石油や金属セラミックスなどの天然資源を利用するだけでなく、超高機能構造タンパク質による次世代素材を創造し、素材の産業革命を起こし、日本の産業競争力を飛躍的に向上させようとしています。たとえば、重さ当たりの強靱性が鋼鉄の340倍にもなるクモ糸を超える「超高機能構造タンパク質」をつくる遺伝子を微生物に組み込み、人工的に量産することが見込まれています。

2. 「日本」にて「Society5.0」を使用した消費者向けサービス

AI無人コンビニエンスストアは、アメリカではAmazon GOがすでに本番稼働していますが、日本でも2018年10月にJR東日本の赤羽駅ホームで、レジのないAI無人決済のコンビニエンスストアの第2回目の実証実験がスタートしたことを、Society5.0を使用した消費者向けサービスの1例として紹介します。

その利用方法は次の通りです。事前にSuicaなどの交通系ICカードヘのチャージが必要となります。店舗に入る前に店頭のスキャナーにICカードをタッチすると、自動ドアが開きます。3名まで同時に入店できます。商品を手に取り店舗出口側の所定の場所に立つと、決済のための画像認証が行われます。画像認証後ICカードをスキャナーにタッチして決済し店を出ます。そのプロセスは先行するAmazon GOに比べると一手間多いですが、近い将来同等あるいはそれ以上のものになるでしょう。

AIが学習することで認識精度が向上しますから、無人決済店舗の実用化はすぐそこまで来ています。

3. 「日本」での「Society5.0」導入企業例

Society5.0が実現すると、時間や空間に縛られない働き方が増加します。人々はAI、ロボット等の機械との協調によりそれぞれの能力を伸ばし、自分自身にあった働き方を実現するほか、仮想現実や拡張現実等のICTを活用した高度なテレワークによる「働き方のスマート化」が実現します。

具体的には決められた就業時間に会社に来て働くワークスタイルが見直され、自宅やカフェ等の好きな場所で自分の好きな時間に働くことや、ICT の活用によって、遠隔地にいる同僚があたかも同じ会議室にいるように働くことができるようになる中、移動を伴わず会合に参加したり、人とコミュニケーションを取ることが可能となります。企業側もテレワークの従業員の雇用を進めることで、通勤が不可能で採用を諦めていた地方の人材の有効利用も期待できます。

ここで確認すべきこととしては、こうした変化で人々が時間や空間を問わず、24時間365日ノンストップで「働かされる」のではないということです。働いた時間による評価から成果による評価に力点が移ることで、不必要な長時間労働はなくなるほか、長時間労働の是正に向けた施策が取られるべきです。個人が自分の意思で働く場所と時間を選択する、すなわち自分のライフスタイルを自分で選べるような社会になることが期待されます。

欧米企業に比べて日本企業でのテレワーク導入は未だ遅れています。2018年8月の調査によればテレワークを導入している国内企業は14万社と推定され、導入率は4.7%とのことですが、従業員数500名以上の企業だけでみると、導入率は23.6%でした。

今後のテレワークの普及については、ワークライフバランスの向上による生産性の向上、優秀な人材確保と流出防止、労働人口減少の緩和などの目的で導入が進み、2022年には29万社(企業導入率9.7%)になると予測されています。

4. 「日本」での「Society5.0」の今後の展望(企業側の変化)

Society5.0が実現することで、製造現場や物流現場における自動化やスマート農業による省人化の実現により、労働人口の減少をカバーすることができるようになります。また市場のニーズや在庫の状況が正確に把握でき、経済発展のトレードオフとして考えられて来た社会的課題をも同時に解決できることになります。

インフラ周りでは水力・火力・太陽光発電などの多様なエネルギーの組み合わせや地産地消といった消費の最適化も行なわれ、その結果エネルギー消費や運搬コストのロスのない流通が行われることも忘れてはいけません。そしてものづくりの観点では枯渇することが懸念される天然資源だけを頼るのではなく、新世代素材を利用したものづくりが期待できます。

5. 「日本」での「Society5.0」によって今後どんな暮らし方になっていくのか(消費者側の変化)

Society5.0が実現すると、消費者の当たり前だった生活にも変化が生まれます。ひいては中長期的な経済の発展が期待できます。

遠隔自立ロボティクス技術などにより多様なロボットが本番稼働し、例えば大規模災害の際に今まで即時救出が困難だった場所においても、ロボットが大いに貢献し救出できない場所がなくなることでしょう。そして医療や介護においても遠隔医療やロボットによる介護を導入し、医療費の削減や地域格差のない医療を実現します。

エネルギー情報の把握と活用により、平時には需給状態の最適化を維持しながら、発災時にはその地域内に賦存するエネルギーの最大活用や輸送ルート等の確保等の減災復旧システムをいち早く構築し、地方財政の健全化にも貢献しますし、消費者の生活の安全も守ります。

インターネットおよび店舗で購入した商品はドローンでの運送が通常となり、どこにいても商品が届く仕組みが確立し、無人の電気自動車での移動が可能になり、運転免許がなくても安心できる長寿社会を後押しすることが期待されています。空と陸と海の移動がシームレスに繋がる、将来のトータルモビリティサービスの一つとして空飛ぶクルマが実用されるのも遠くない未来かもしれません。

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