清潔で安全な水の都市への安定供給を確保するために - インテリジェント・アーバン・ウォーター・サプライのテストベッド

清潔で安全な水の都市への安定供給を確保するために - インテリジェント・アーバン・ウォーター・サプライのテストベッド – 記事

日本では今年12月6日に、水道事業の民営化を容易にする『改正水道法』が成立しました。この法案がそもそも提案されるに至った背景には、2018年6月18日に発生した大阪北部地震により21万人以上が断水の被害を受けたことで注目を集めることになった水道管の老朽化があると言われています。

また人口減少による水道からの収入の減少も、水道事業を公営で継続する際の深刻な課題だと言われています。人口減少による水道料金収入減少は、水道事業維持を困難にしているようで、約40年後には水需要が約4割減少すると厚生労働省は試算しているようです。
この悪循環を何とか断ち切るために、公営事業でのコストカットの限界を自覚し、民間企業のコストカットの手法に期待をかけているともいえるでしょう。

世界を見回してみても、急激な都市への人口集中などを背景に、清潔で安全な水を都市の居住者に安定して、できるだけ安価に供給することは大きなチャレンジとなっています。発展途上国での水道インフラ設備の老朽化や水道事業の非効率性なども解決すべき課題です。

Industrial Internet Consortium(IIC=インダストリアル・インターネット・コンソーシアム)は、この課題を解決するためのテストベッドに取り組んでいます。
今回は、IICのインテリジェント・アーバン・ウォーター・サプライのテストベッドを紹介します。

インテリジェント・アーバン・ウォーター・サプライのテストベッド

水と空気は誰もが必要とする天然資源です。このテストベッドは5つのフェーズで展開され、ビジネスモデル、ブラウンフィールド・アセット、様々なビジネスシステムの統合、スケーラビリティ、アナリティックなどを検証します。
テストベッドの拠点として選択されたのは、人口380万人の中国広西省欽州市で、欽州市の水道局とのコラボで検証を行っています。近年中国では、都市部への人口集中が加速し、また高層住宅も林立し、これらへの安定した水の供給が課題となっています。

参加メンバー企業:Water & Process Group(WPG=ウォーター&プロセス・グループ、現在は社名をSuez=スエズと変更)、Thingswise LLC(シングズワイズ)、Chinese Academy of Information and Communication Technologies (CAICT=中国信息通信研究院)
WPGは水供給(水圧パンぷ、バルブ、タンク、水流メーター、品質管理機器、SCADAシステム、システム統合、インダストリアル・エッジ・ゲートウェイなど)に関する専門家の立場からこのテストベッドに参加しています。Thingswiseはシステム・アーキテクチャを提供し、CAICTはスタンダード&リサーチ・パートナーとして参加しています。

課題:都市部における水供給の懸念は、安全性(水質汚染をタイムリーに検知することができるか)、サービス(水供給に支障が出た場合に迅速に対応できるか)、効率性(水漏れや水不足を察知する能力)、有効性(オペレーションの最適化)などです。

解決策:このテストベッドは、インテリジェント・アーバン・ウォーターサプライ・マネージメント・クラウドサービスの上に構築されています。このクラウドは、完全に統合された多機能、マルチサービス、マルチロール・ソリューションです。

この目的のためにクラウドサービスを構築することの重要な利点は、スケールメリットを生かすことです。コストが軽減されることで、多くの市町村の水道局が上水道でこのシステムを利用することが容易になります。

このクラウドサービス・プラットフォームが提供するのは;システム全般をカバーする水質モニターを採用することで水の安全性と品質を向上し、解析により水質の向上を実現し、問題点の早期発見を可能にする;リアルタイム・モニタリング、不具合検知、予防メンテナンスなど最新のアセット・メンテナンス手段を利用して水の安定供給に努める;最新の解析技術により水供給の最適化を図り、水漏れを検知し、システム全体でのピーク使用時の水供給管理を行うこと、などです。IoTゲートウェイを実装することで、水供給のアセットにクラウドサービス・プラットフォームを接続し、そこから収集されるデータに対して高度な解析を実行し、水質管理や予防メンテナンス、ピーク時の水の安定供給などに役立てます。

WPGの挑戦

WPGは中国の大手給水機器メーカーで、IICの初期メンバーの一つです。水道ポンプは洗練されたインダストリアル・オートメーション・システムでプログラマブル・ロジック・コントローラー(PLCs)によってコントロールされています。しかしその課題は、一旦ポンプがインストールされてしまうと、中央管理機能などに接続されることなく独立して稼働していることです。そのため、故障が起きるとそのたびにメンテナンス技術者が対応を迫られ、断水によるコストや修理費用などは膨大な額になっていました。

WPGがまず取り組んだのが、機器にセンサーを問いつけることで、その状態を遠隔で可視化することです。次に解析技術を活用して、機器の不具合の早期発見を自動で実施できるようにしました。多くのメンテナンススタッフを個々の機器に定期的に派遣してマニュアルでチェックを行うよりも、コストを格段に削減することが可能です。
テストベッドを通じて、個々のポンプのエネルギー効率をモニターすることが可能となりました。次のステップは、十分な数のポンプが接続されているときに、ピアの正規化された使用パターンと比較することです。

テストベッドでは、エネルギーの節約を30%向上させることを目標としています。

テストベッドが取り組む、コスト削減、エネルギー効率の向上などは、日本の水道事業でも
参考にできる部分があるかと思います。

≪参考資料≫
https://www.iiconsortium.org/intelligent-urban-water-supply.htm
https://www.iiconsortium.org/news/joi-articles/2017-Nov_JoI_Intell_Urban_Water_Supply_Testbed.pdf
http://www.processgroupintl.com/about-us
http://www.thingswise.com/
http://www.caict.ac.cn/english/intro/201804/t20180428_161365.htm