世界最大の農業国家のポジションを維持するために - 中国の農業機械化とロボット化

世界最大の農業国家のポジションを維持するために - 中国の農業機械化とロボット化 – 記事

農業は中国では3億人の雇用を抱える重要な産業です。主な農産物は米、小麦、ジャガイモ、トマト、モロコシ類、ピーナツ、茶葉、バーリー、綿、油糧種子、大豆などで、生産量は世界最大を誇ります。
1949年に中華人民共和国が誕生して以降、20世紀の間は農業生産量は穀物で4倍、綿が8倍、油糧種子では10倍と順調な成長を続けてきましたが、21世紀に入ると中国の主要な帯水層の枯渇などを原因として、農業生産量が減少し、中国は農業生産物の輸入国となりました。2011年の段階で、中国は世界最大の農産物輸出国であると同時に輸入国でもありました。

中国の農業が抱える課題としては、遠隔地の農家が都市部の正しい需要情報を入手することができず、需要と供給に差が生じている、地方の農家から都市部の販売場所への交通網が整備されていないため、最大で25%の生産物が小売部門にたどり着く前に腐敗し販売不可能になってしまう。これはひいては農家の収益に深刻な打撃を与えます。
この悪循環が、農業従事者に新たな農機具への投資を躊躇させ、結果として農家は昔ながらの労働集約型のオペレーションを余儀なくされています。しかし、中国の一人っ子政策や若年労働者層の都市部への移動などで農業での労働者数の確保も難しくなっています。

Made in China 2025での農業の位置づけ

2015年に発表されたMade in China 2025では、農業の重要性を鑑み、農業機器を10大重点分野の一つに掲げ、この産業のアウトプットを8,000億元(13兆円超)に伸ばし、この分野で世界のトップに立つことを目指しています。国内市場の需要の95%以上をカバーすることを目指しており、自動化技術と農機具の分野で先進的国際スタンダードに到達することを目標にしています。
2010年以降、中国の農業機械メーカーは8,000社を超えており、2014年の段階ですでにその生産額は世界農機具生産額の50%を超えました。代表的な生産品はトラクターとコンバインで、その生産量はそれぞれ世界一となっています。

8,000社のうち中小企業が占める割合が高いのですが、ヤンマーが協力関係を築いた、中国最大の農業用車両メーカー山東時風集団や、First Tractor Company Ltd. (中国一拖集団)などのような大型企業グループは、比較的強い競争力を持っています。
今回はYTO Group Corporation(中国一拖集团有限公司)傘下の中国最大手農機メーカーFirst Tractor Companyを紹介したいと思います。

First Tractor Company

同社は、1955年に設立された農業機器メーカーです。同社の持株会社はYTO Group Corporationで、その親会社は、ツール製造、建築機器、農業機械、インフラ建設などを行う、China National Machinery Industry Corporation (SINOMACH=国机集団)です。
トラクターとディーゼルエンジンに事業の主力を置き、世界140か国以上で事業展開を図っており、そのミッションステートメントでは、R&D及び人材育成の重要性を謳っています。

同社は、無人運転トラクターYTO LF1104-Cを開発し、その性能は中国国営テレビCCTV1『人間と機械のバトル』の番組で勝利を収めました。

YTO LF1104-Cモデル

無人運転トラクターは、差動基地局、リモートコントロール・システム、農機具無人運転システム、インフォメーション・マネージメント・システムの4つの部分から構成されています。
YTO LF1104-Cの機能は、自動経路計画とナビゲーション、自動後進、自動ブレーキ、リモート発進、エンジンスピードの自動コントロール、障害物回避などが含まれています。
最新のITテクノロジーを統合することで、農業の質と効率の向上を目指し、土地や種子、肥料などの最適利用を可能にして農業生産にかかる費用の削減が可能になります。
今後のさらなるリサーチの推進で、モバイル・ターミナル、ドローンや衛星などのパノラマ技術の活用、インテリジェント農業システムなどをさらに活用し競争力を強化していく戦略を立てています。

米中貿易摩擦が与える影響

アメリカ大統領補佐官のFrances Townsend(フランシス・タウンゼント)は、2017年12月27日のForeign Policyオンライン版で『米中農業戦争が始まる』と題する記事を提供しています。この記事の中でTownsendは、世界の総人口が100億人を超えると予測される2050年までに農業生産量を70%増加させる必要があることを指摘するとともに、中国が14年連続で農業を重点分野に挙げていることに触れ、この分野の競争に打ち勝つためにアメリカは政府と民間企業が共同で革新的技術開発を行うことの重要性を強調しています。

中国が、農業生産技術に関する知的財産を入手するために、過去10年間で1000億ドル近くを投じ、ヨーロッパの大手農業企業の買収(例えばスイスのシンジェンタ)を積極的に行っていると述べ、アメリカ政府の農業重視政策を促しています。
トランプ大統領は、中国に対する関税に関して農業・酪農・林業分野でもその機器や部品を高関税の対象品としてリストアップしています。
関税適用の開始時期に関して、90日間の猶予を設けることが合意されましたが、11月の中国の対米貿易黒字が記録的に高いものになったことを受けると、高関税適用が回避されるかは注目に値するところです。

部品や製品への高関税に関しては、アメリカ国内の使用者や企業からもその悪影響が懸念されており、現在双方我慢比べの状態になっているこの貿易摩擦論争の行方を世界中が興味を持って見守っていると言えるでしょう。

≪参考資料≫
https://multimedia.scmp.com/news/china/article/made-in-China-2025/index.html
https://en.wikipedia.org/wiki/Agriculture_in_China
https://foreignpolicy.com/2017/12/27/the-battle-of-the-breadbaskets-is-coming-to-a-head/
http://www.first-tractor.com.cn/en/index.aspx
http://www.first-tractor.com.cn/about_en/index.aspx?nodeid=155&page=ContentPage&contentid=4683

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