アメリカにおける「デジタルサプライチェーン」の歴史:定義や概念、また今後の展望 – その②

1. 「アメリカ」にて「デジタルサプライチェーン」を使用した企業向けサービス

Digital SCMの企業向けサービスは、多くの分野で稼働しています。例えば輸送管理では、トラックやトレーラーに設置したセンサーにより、状況の変化を的確に監視することが可能になります。

オハイオ州では125マイル以上の光ファイバーを地下に敷設し、企業向け高速接続を整備しているほか、33スマートコリドーの起点でもあります。33スマートコリドーは、ダブリンとイーストリバティ(コロンバスの北西)を結ぶ総延長35マイルの高速道路です。オハイオ州運輸局では道路沿いに設置したセンサーからのデータを研究者に提供しています。

もともと33スマートコリドーは、オハイオ州や、グローバルベースの人とモノの輸送方法を変革できる技術を、安全にテストするために用意されたものでもあります。渋滞や天気の傾向を特定するのに役立つスマートロード (smart roads) を作るために、光ファイバーケーブルとセンサーを道路に埋め込み、予測分析を行っています。

2. 「アメリカ」にて「デジタルサプライチェーン」を使用した消費者向けサービス

アメリカでDitial SCM を使用した消費者向けサービスの代表的な例として、アマゾンの無人コンビニエンスストアである、Amazon GOがあげられます。
Amazon GOには、自動車の自動運転で活用されているのと同様なコンピュータビジョンと、ディーブラーニング、センサー技術が使われています。スマホ一つ持っていれば、簡単でスムーズに商品の決済ができます。

Amazon GOを利用する前に、まずスマホにAmazon GOのアプリをダウンロードし、支払いに使用するクレジットカードの紐付けが必要です。入店するにはスマホをかざして、入口にある機器でQRコードをスキャンします。認証が終われば、あとは自由に商品を選びます。手に取った商品はすべてスマホ状に表示されます。返品したい場合はスマホ上で払い戻しボタンをを押せば完了です。

これにはディープラーニングのアルゴリズムが使われています。店内の天井にはいくつものカメラが取り付けられており、全ての来店客の動きを把握します。内容が間違っている場合は、簡単に削除できます。支払いは店を出るときに自動的に行われます。レジで会計する必要はありません。当然のことながら、お客それぞれの嗜好や来店頻度を登録し、在庫管理、商品発注も一元で行います。

3. 「アメリカ」での「デジタルサプライチェーン」導入企業例

アメリカでDigital SCMの導入事例は、ウェブサイトを検索してみると、実に多く発表されていますが、今回は2つの事例を紹介しましょう。

1)Colgate Palmolive (コルゲート・パーモリーブ、以下コルゲート)

世界最大の一般消費財メーカーであるコルゲートの、以前のSCMはとてもユニークでした。世界的なブランドでありながら、地域ごとに別々の生産ラインを持っていました。その結果ブランド名は知れ渡りましたが、企業全体に非効率をもたらし、地域ごとのSCMから、グローバルのSCMへの変換が必要になりました。グローバルSCMへ変換するため、地域SCMサイロを排除し、それまでの地域ごとの調達業務を、グローバル調達に切り替え、顧客サービスと物流に投資し、サポートに注力することで、その後10年間で大幅なコスト削減を達成しました。

さらにコルゲートは、Smart Manufacturing (スマート製造)とデータ分析という2つの重要な分野で、2020年までに達成すべきDigital SCM戦略を策定しました。Smart Manufacturing ではより機敏なSCMの設計、エンドツーエンドの計画と実行の改善、複雑な問題に対処するための分析機能の活用、運用の卓越性の実現を目指すことで、2020年の戦略を後押しします。またデータ分析のデジタル戦略では、2015年に設定したコルゲートオペレーショナルエクセレンスの3つの主要業績評価指標(KPI)である、コスト、サービス、および在庫の最適なバランスを取るための分析機能を実装します。

自動化の観点では、コルゲートは製造プロセス全体を継続的に更新しています。 すでに産業用ロボットを広く採用してきたコルゲートは変革の一環として、コラボレーティブロボットや自動誘導車両(AGV)にも拡大しています。 一部のプロセスはすでに完全自動化されており、製造実行システム(MES)を介して複数の工場フロアやラインを監督しています。 自動化と統合を改善し、意思決定における分析力を活用します。

2)Starbucks (スターバックス)

1971年にアメリカのシアトルで始まり、今では全世界に25,000以上の店舗を有するスターバックスは、220億ドル以上の年商を生み出します。中国では現在3,000店舗あり、2021年までに5,000店まで増やす計画から、15時間おきに1軒の新店舗が開店している計算になるわけで、休んでいる暇はありません。2003年の41億ドルから2008年の104億ドルへの収益の増大で、2000年代スターバックスの供給ラインは急速な拡大に追いつくために苦労し、そのためのコストが膨大となり、2000年後半の景気の失速で業績は悪化しました。そこで2008年からSCMの抜本的な改善を打ち出したのです。

スターバックスのコストの約65〜70%は、輸送、物流、および契約製造のアウトソーシング契約に起因していたことを突き止め、明確に定義された機能的役割を持つSCMを再構成し、簡素化し、 サービスレベルを向上させながらコストを削減し、最後に将来SCMの機能を維持し、強化するための基盤を作り出すという、3段階からなるSCM再編成を実行しました。Digital SCMにより、自動情報システムモニターで、世界中の需要がリアルタイムで把握できることや、株式情報、輸送計画、在庫管理など、重要なサプライチェーンを集中管理することで、効率が上がりました。

その後2年間でコストを5億ドル削減しました。 現在スターバックスは、100%フェアトレードコーヒーを保証し、持続可能性の目標を追求しています。 今後もDigital SCMの新たなデジタルイノベーションを採用していきます。

4. 「アメリカ」での「デジタルサプライチェーン」の今後の展望(企業側の変化)

引き続きDigital SCMでの急速な変化が予想されます。デロイトコンサルティング(Deloitte Consulting)のプリンシパルである、Scott Sopher氏は、

「Digital SCMに関する変化のスピードは急速になる。」

と述べています。さらにSopher氏は、

「Digital SCMによりサプライチェーンは、外部との不完全な連携状態から、調和のとれたグローバルベースのネットワークに進化する。」

と述べています。

サプライチェーンの効率は、ビジネスプロセスと計画の自動化によって押し上げられます。例えば倉庫プロセスに沿って、自動的に完全に材料を処理し、適切な部品を選び製品を組み立て完成品を作り、輸送トラックやトレーラーに積み込みまでをロボットが行い、その後トラックやトレーラーが目的地に出発し、トラックが走るスマート道路は、渋滞や天候のなどをリアルタイムに監視し、最適な行程を瞬時にトラックに指示を出すといった、一連のビジネスプロセスが完璧に行われるようになり、輸送プロセスは最適化され、得られた様々なデータからは、より良い需要予測もできるようになり、輸送の柔軟性を増やすことができるでしょう。

5. 「アメリカ」での「デジタルサプライチェーン」によって今後どんな暮らし方になっていくのか(消費者側の変化)

Digital SCMは電子商取引の増加により、今後消費者中心 (Consumer Centric) になっていくことでしょう。消費者はより速くてより便利な物流を求めます。消費者がオンラインで購入する商品量は絶え間なく増大し、包装、保管と特別な対応が必要な商品の配送において新しい革新、つまりConnected Life(機器同士がつながることによって生まれる新しい生活)のトレンドとして、家庭環境と連動した、スマートな物流サービスが必須となります。

ボタンを押すだけで注文が完了する、Amazon Dash Bottonや、家電が自動発注するAmazon Dash Replenishmentはアメリカ中心に普及していますが、取り扱い製品の拡充も進み、将来は自宅にいながら全ての物品の購入が可能になり、ドローンなどの利用で配送遅延がゼロ時代が到来することでしょう。

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