【IoT用語集】It’s OWL(イッツ・オウル)とは?

【IoT用語集】It’s OWL(イッツ・オウル)とは? – 記事

はじめに

It’s OWLは、ドイツのオストヴェストファーレンリッペ(OWL; OstWestfalenLippel)地域政府)が主唱し、ノルトライン=ヴェストファーレン(NRW)州政府がこれに協力する形で始まった産業クラスターです。その活動は2004年にまでさかのぼります。同地域は、中堅製造業者が多く存し、人工知能研究をコア研究内容として、製造業の自動化や生産性の向上への応用を地域団体で行ってきました。

It’s OWLは、ドイツ全体の製造業の革新・生産性の向上を図る国家プロジェクトであるIndustry 4.0プロジェクトの中で先端クラスターとして研究教育省により指定されました。2012年のことです。

It’s OWLをフルネームで言うと、 intelligent technical systemsとなります。オストウェストファーレンリッペ自体は無名の地味な地方自治体でしたが、ドイツを代表するファクトリーオートメーションソリューションを提供する会社であるBeckhoffや掃除機メーカーのMiele日本のDMG森精機、かつてのドイツPCメーカーの雄であったウインコール・ニックスドルフ(Wincor Nixdorf)など174社が参加しています。スポンサー企業は22社あり、そのうちの2社が上場企業です。

プロジェクトの成果

It’s OWLのプロジェクト数は45あり、製造業でのオートメーション、人間と機械の協力、自動車の自動運転、家電のネットワーク化などの取り組みが行われています。例えば日本のロボット革命イニシアティブや、経済産業省主唱のIoT戦略プログラムで実行されているプロジェクトと似た内容ということができます。

中でも例えばScientific Automationプロジェクトは、ファクトリーオートメーションの速度と正確性を約10%上げることに貢献したといわれる主要プロジェクトです。さらに、このプロジェクトの中で最大規模を誇るプロジェクトはSelf X-Capabilityといわれるプロジェクトで、Industry 4.0の目標である生産性向上・最適化のための方法論研究およびシステム研究プロジェクトです。各プロジェクトで合計1億ユーロの資金協力を得て、研究開発を続けています。この資金の中では研究開発が可能ですが、商用化するのは各企業の研究開発および資金収集の努力にかかっています。

2014年には、世界最大の見本市といわれるハノーヴァーメッセにデモ工場を出展、ICチップの指令により、製品が自動で生産されるシステムを披露しています。
ドイツ政府による先端クラスターの指定は5年の指定となっているためIt’s OWLはさらに他のドイツ国内およびEU域内の助成プログラムに移行しています。

Industry 4.0とIt’s OWL

It’s OWLはIndustry 4.0 を支えるプロジェクトです。Industry 4.0は、デジタル技術により、生産コストを下げて、ドイツ企業の生産性向上と新興工業国との関係での価格競争力を同時につける戦略です。これはドイツ連邦教育科学省が勧奨し、ドイツ工学アカデミーが2011年に発表したのが最初です。

現在では、It’s OWLが取り組んだ人工知能・RPA・ロボット技術を使った生産方式や、IoT技術による生産方式など、革新的な生産技術の総称としてIndustry 4.0の語が使われる例が多くみられます。また、世界的なムーブメントとして、「IoT技術により、第4次産業革命が起きている」、などと言われることがありますが、第4次産業革命=インダストリー4.0として使われることがあります。

Industry 4.0は、下記の要素を設計思想に持つため、合理的・効率的生産工程を実現することができるものとされています。

  1. 相互運用性 人物・装置の相互の通信
  2. 情報の透明性 システムがデータに基づいて解釈し、恣意的条件を排除
  3. 技術的アシスト AIやRPAがアシスト
  4. 自律的意思決定 人・物・装置相互の即時のフィードバックによる生産ラインの意思決定

It’s OWLのプロジェクトは、もともと人工知能活用プロジェクトとして始まっており、その成果は、1~4それぞれの領域で目に見える形となってプロジェクトのホームページなどで紹介されています。デジタル化・自動化さらに自律的意思決定に至る製造業の進化を体現するものでもあります。

ドイツ政府による盛んな産業クラスターの形成やコンペ助成

It’s OWLは先端クラスターに政府により指定されたプロジェクトですが、Industry4.0を実現する優れた企業・研究機関を助成するためドイツ政府はクラスターやコンペに助成金を支出し、ITやファクトリーオートメーション人工知能だけでなく、サービスの最先端を生み出すために、医療・バイオテクノロジーなどの分野でも研究開発を助成しています。その例は以下の通りです。

  1. 先端クラスター(第1回~第3回)It’s OWLは第3回に選出されています。
  2. ゴー・クラスター
    ドイツ連邦経済技術省は「ゴー・クラスター」プログラムは2012年に開始され、現在94のクラスターが参加しています。5500社以上の中小企業・1300社の大企業・教育研究機関は1500機関が関与しています。
  3. アントレプレヌーリアル・リージョン
    「アントレプレヌーリアル・リージョン」(Entrepreneurial Regions)は、ドイツ連邦教育研究省によるドイツ東部(旧東ドイツ地域)のイノベーション政策です。

まとめ

上記に見たように、Industry 4.0を成功させるためにドイツ政府は政府主導で研究開発の支援を行っています。その中でIt’s OWLは一つのモデルプロジェクトとしてとらえられており、成果とともに各メディアで取り上げられています。日本でも同様の変革が起こっており、国際的な連携協力が模索され、日本でもロボット分野などにおいてIt’s OWLや後継プロジェクトとの連携が実現する日も来るかもしれません。

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