アメリカにおける「IIC」の歴史:アメリカでのIoT推進また今後の展望 – その①

アメリカにおける「IIC」の歴史:アメリカでのIoT推進また今後の展望 – その① – 記事

1. 「IIC」の言葉の意味・定義

IIC (Industrial Internet Consortium) は2014年3月27日に、通信大手のAT&T、ネットワーク大手のシスコシステムズ、世界最大のコングロマリットのゼネラルエレクトリック (GM)、IT大手のIBM、半導体大手のインテルの5社によって、アメリカマサチューセッツ州ニーダムで設立された、世界最大級のIoT推進団体です。会員には大企業および中小企業の技術イノベーター、特定市場(ニッチ市場)のリーダー、リサーチャー、大学および政府機関が名を連ねています。

その母体は非営利のコンピューター業界で、ソフトウェアなどのモデリングとモデリングベースの標準化団体で、1989年に発足したOMG (Object Management Group) です。IICはグローバル、非営利かつオープンな世界規模の組織で、インダストリアル(産業)分野でのIoTの実装の加速を目標としています。 つまり優れたデバイスと先進的な分析技術を結びつけ、製造業、エネルギー産業、小売業、運輸、医療、鉱業、行政(スマートシティ)において、世界経済規模の変化をもたらすIoT革命を実現しようとしているのです。 

IICでは、19のワーキンググループとチームが、戦略とソリューションライフサイクル、リエゾン、マーケティング、セキュリティ技術、テストベッドの7分野で活動しています。そして全体を司るコンソーシアムステアリングコミッティが、IICの会員から選出された12名のメンバーで構成されています。

IICでは、次の目標を掲げています:

  • 本番稼働しているアプリのため、新規産業のユースケースとテストベッドの作成を通じてイノベーションの推進
  • インターオペラビリティに必要な、参照アーキテクチャとフレームワークの定義と開発
  • インターネットと産業システム向けのグローバルベースでの開発、標準プロセスへの影響を確認
  • 現実的なアイデア、実践、レッスン、洞察を共有し交換するための、公開フォーラムの促進
  • 革新的なアプローチに基づいた、堅牢なセキュリティの構築
  •  

主な活動としては、「オープンであること」を基本に、IoT技術の活用のために必要な問題を組織的、人的どちらの面からも解決していくソートリーダーシップ活動(Thought Leadership) や、テストベッド(Testbed) を行うことです。テストベッドでは、新規技術、新規アプリケーション、新製品、新規サービス、新規プロセスなどが市場に出る前に、その有用性と実行可能性を確認するために厳格なテストが行われます。テストベッドで得られた成果は、広く共有されます。

ドイツのインダストリー4.0では、ドイツの製造業を世界標準にするスマートファクトリーというコンセプトが背景にあったのに対し、IICが対象とするのは製造業だけでない点が異なっています。開発方法論の標準化を指向する姿勢や,テストベッドを通じての,ビジネス、モデル開発から標準仕様の評価と改善提案、そして技術開発からエコシステムの構築というプロセスを重視する姿勢からそれが明らかです。

日本では、OMG日本支部の日本OMGが、法人設立に先がけIIC Sales Representative Japanの組織を設立し、さらにOMG日本支部傘下に、日本独自の組織であるi3 (Industrial Internet Institute)で新しいビジネスサービスモデルを創ることを推進しています。

2. 「IIC」という「言葉」はいつ生まれたのか

インダストリアルインターネット (Industrial Internet) という用語を最初に世に出したのは、GEです。ICT技術を活用し生産性の向上やコストの削減を支援する産業サービスを、インダストリアルインターネットとして、2012年にリリースしました。当時GE社が掲げたのは、「ハードウェア(機械)とソフトウェア(情報)を融合し、サイバー(コンピュータ空間)とフィジカル(現実世界)を連携する仕組みを実現する、産業革命の実現」でした。

GEのインダストリアルインターネットのコアには、Predix(プレディクス)と呼ばれる基本ソフトウェアがあり、製品を販売するだけではなく、保守管理を含めたパッケージ型事業の実例となりました。これにより製品から稼働データなどを収集してビッグデータを分析し、運用・保守や次の製品開発に生かす事により、製造業のビジネスモデルを変えることを目指しました。その後インダストリアルインターネットはアメリカでのIoT戦略の基本概念となり、IICが設立されるにいたりました。

3. アメリカでIICの概念が生まれた背景

インダストリアルインターネットをGEが発表した一方で、IICの母体であるOMGでは、IICを設立する以前から、IT業界ソフトウェア品質標準化団体のCISQ(Consortium for IT Software Quality)や、現在はCWG (Cloud Working Group)に業務移管された、クラウドの情報共有団体であるCSCC((Cloud Standard Customer Council)を主催し、さまざま技術の世界標準化を推進してきました。そしてアメリカ政府でも、Smart America Challengeという取り組みを先がけて始めたのち、その時が訪れました。

世の中はドイツがインダストリー4.0で先陣を切った第4次産業革命の時代に突入し、アメリカでは、製造業に特化したビジネスモデル変更の取り組みから一歩進み、製造業のみならず、エネルギー、農業、運輸、医療といった多くの産業でIoT革命を起こすべく、OMGの管理のもとで、米国企業5社によるICC設立が実現したのでした。

4. 「アメリカ」にていつごろから「IIC」という言葉が広まりはじめたのか

2014年に5つの企業で設立されたIICですが、設立の1年後には90、2年後の2016年時点ですでに世界中から256の企業、団体が参加しました。そのうち過半数はアメリカ企業が占め、その中でも中小企業の割合が高いです。第4次産業革命時代を迎え、アメリカではまさにIICの出現が待たれていたのです。
・ なぜ広まったのか、その背景は・環境はどうだったか
2014年はオバマ政権時代で、中間選挙がありました。選挙活動でインターネットを利用するのは、もはや当たり前となり、インターネット時代も円熟期を迎え、IT機器だけではなく、モノのインターネット(IoT = Internet of Things)対応が製造業中心として,急激に進みました。第4時産業革命の先陣をきったドイツがインダストリー4.0を発表し、アメリカにも確固たるIoT戦略が必要だったために、IICの活動はすぐに本番稼働したのです。

5. 「アメリカ」「IIC」におけるキーパーソンとその人の活動

米IIC設立メンバーのうちでも、その中核はGEでした。GEでは自社で取り扱っている電車や船舶、航空機エンジン、発電所のタービン、医療機器など、ネットワークに繋がるモノからの膨大なデータを解析し、効率化することで、顧客に価値を提供できるとし、「1%の効率化が年間200億ドル(2兆4,000億円)の利益を生みだせる」とその効果を試算しました。IIC設立時にGEのCEOであったジェフイメルト氏は、次のように述べました。

「ハードウェアのスペックだけで競争に勝てる時代は終わりました。ハードウェアは同じでも、ソフトウェアを使ってハードウェアの能力に引き出すことで、顧客の価値を最大化することができます。」

つまり、ハードウェアの能力を引き出すソフトウェアが、競争の勝敗の鍵を握るという新しいビジネスモデルだと発表し、自社でいち早く実践をしました。GEは現在もIICのファウンダー企業として、ステアリングコミッティの中心に位置しています。

6. 「アメリカ」での「IIC」の今後の展望

現在は200以上の団体が名を連ねており、ファウンディング&コントリビューティングメンバー(Founding & Contributing Members)はGE、IBMのほか、米DELL EMC、独ボッシュ、独SAP、中国ファーウェイとなり、米国の業種横断でパーツ販売を行うベンダーだけでなく、欧州企業や中国企業なども名を連ねるようになりました。IICのメンバー構成は、特定の国、業種、業界、分野に偏っていないことが特徴としてあげられます。このことは、1国、1社もしくは1つのセクターでIoTサービスを構築することが、困難であることを示しています。 

IICはオープンな相互運用性基準の要件を特定し、スマートデバイス、マシン、人、プロセスを接続する共通アーキテクチャを定義して、大規模データへの信頼性の高いアクセスを加速し、また、テストベッドによるイノベーションにも焦点を当てていきます。2020年までにインダストリアルインターネットによって、2兆ドル(225兆円超)規模のビジネスチャンスが生み出されると見られています。2025年までにインターネットにつながる事業関連アセットの数は、あらゆる種類のデバイスを含めると、実に450億に上ることが予想されています。このうち消費者向けがおよそ160億、広告向けが120億、産業向けが170億を占めるとされています。

アメリカにおける「IIC」の歴史:アメリカでのIoT推進また今後の展望 – その① 世界のIoTに関するレポート公開中