中国における「中国製造2025」の歴史:導入したサービス、企業について – その②

中国における「中国製造2025」の歴史:バックグラウンド、概念や今後の展望について – その② – 記事

1. 「中国」にて「製造2025ワード」を使用した企業向けサービス

中国の製造業は30領域にわたり,年間営業収益2,000万元以上である中国製造企業は約30万社あります。各領域や企業の発展レベルは大きく異なり,工業化の進展段階も混在していましたが、スマート製造の推進のため、中国中央政府では巨額な投資を行い、スマート製造の標準化実証実験やモデル応用に関わる226のプロジェクトを実施し,「国家スマート製造標準システム建設指南」を制定しました。

中国製造2025の企業向けサービスとして、Estun(埃斯顿自动化)の中国国産ロボットのプロジェクトを紹介しましょう。

1993年設立のEstun は制御機器のEstun Automationと、ロボットのEstun Roboticsで構成される中国の製造メーカーです。

コア部品をはじめとするロボット産業の技術向上を図る狙いで、2017年に英国のトリオモーションテクノロジーを買収しました。Estunの2017年のおける第3四半期までの営業売上は、6.65億元で、前年度比49.8 %増加しました。売上高純利益率は8.8%でした。

中国の産業用ロボット産業の成長は著しく、2017年の対前年対比での成長率は、68.1%で製造業トップです。年間生産量は12~13万台になると予想されてます。

2016年に中国政府より発表された「ロボット産業発展計画(2016-2020年)」によると、未だ輸入に頼る3つの中核部品である、減速機、サーボモータ、コントローラの国産化を進める方針が掲げられており、2020年までに6軸及び以上の産業機器用で国産中核部品の市場占有率を50%以上にするように求めていますが、Estunはすでに6軸での生産を実装しています。

Estunはロボット本体生産の自動化と情報化を実現し、中国で初のロボットによるロボットを作る工場を稼働させました。工場では組み立て、取り扱い、検査の過程でロボットが活躍します。このことからEstunでのロボット生産能力は急激に向上しており、数年後には、年間販売台数が3万台に達する見込みです。

2. 「中国」にて「製造2025ワード」を使用した消費者向けサービス

1)BAT の台頭

中国では2017年より、Google, Facebook, Amazonなど、影響力の大きい米国のプラットフォーマーのインターネットサービスを国内で遮断しました。遮断の前から検索エンジンについては百度(バイドゥ:Baidu)、電子商取引については阿里巴巴(アリババ: Alibaba)、ソーシャルネットワークサービス(SNS)については騰訊(テンセント: Tencent)が、中国国内向けのサービスを提供していました。3社の頭文字をとって彼らはBATと呼ばれています。
米国の巨大プラットフォーマーが遮断されたことにより、BATがそれぞれの分野を独占することになりました。

2) シェアサイクル

中国人にとって一番身近な存在は、シェアサイクルです。MobikeやOfoなど乗り捨て可能なシェアサイクルが、今中国の街ではたくさん走っています。

その仕組みは、たとえばMobikeの場合、専用アプリをダウンロードし登録が完了したら、GPS機能を内蔵した自転車に貼ってあるQRコードをスキャンして、すぐに利用可能になります。返却方法は、最寄りの駐輪スペースに自転車を停めて手動で施錠すれば完了です。支払いはアプリにチャージすればOKという、消費者に身近な中国製造2025の、IoT製品です。

Mobikeは現時点で365万台というシェアサイクルの動きを、ビッグデータから分析する研究所を設立しました。この成果がスマートフォンのモバイル決済機能サービスを前提にした、シェアサイクル運営会社主導による新たなBtoC型ビジネスになります。

3. 「中国」での「製造2025ワード」導入企業例

中国政府が「中国製造2025」の構想を打ち出してから、中国企業と日本企業との連携が増えています。その連携により、製造2025の具体的な取り組みが加速しています。連携による導入事例を紹介しましょう。

2018年3月に、富士通の中国現地法人と中国でスマートシティーソリューションを提供する国有大手企業の上海儀電集団(以下INESA)が、共同出資会社の上海儀電智能科技 (以下INESAディスプレイ)を設立しました。

電子製造業界において50年以上の歴史を持つINESAディスプレイは、中国製造2025におけるスマート製造プロジェクトのモデル工場に選ばれ、デジタル革新を進めています。

INESAディスプレイは、設備、環境、製造プロセスなどに関する膨大な量のデータを保有しています。生み出されるデータは1時間で数10万におよび、こうしたデータをいかに効率的に収集し、問題対処や改善活動のための判断に生かせるかが、今まで大きな課題でした。

そこで一方の親会社である富士通独自のインテリジェントネットワークの通信技術を用いて、製造装置の故障予兆を行うことができるビッグデータ分析プラットフォームを構築しました。これにより、製造、設備、品質、エネルギー消費など重要なKPI(評価指標)と同時に、生産ラインの状況を監視することができ、工場全体の効率性が一目でわかるようになりました。

NESAディスプレイでは、これまでは独自に開発したダッシュボードで、データ収集の可視化に取り組んでいましたが、新しいシステムの導入により、少なくとも処理に10分以上かかっていた作業時間が大幅に短縮され、ほぼリアルタイムに、工場全体を可視化できるようになりました。

4. 「中国」での「製造2025ワード」の今後の展望(企業側の変化)

中国政府機関である中国工業情報部は、中国全土で数百以上のプロジェクトを推進し、製造業やメーカーにも協力を求め、製造業のさらなる高度化を目指しています。

先端企業が集まった中国の東部地域だけではなく,活性化が進む中部,西部の製造企業での自動化や情報化改革が今後は推進されると予想できます。分野としては,自動車,新エネルギー自動車,産業機械の自動化,グリーン製造,設備の技術改革などが有望です。またスマート製造に関わるセンサー,産業制御システム,産業インターネットも、スマート製造のキーとなります。

究極は製造ラインの人員を限りなくゼロに近づけるため、欧米や日本の製造業が取り入れている、AIやロボットなどを中国企業でも導入して、技術集約型の製造業への転換を推進するでしょう。

中国の李克強首相は2018年3月5日に、全国人民代表大会(全人代、日本の国会に相当)で、中国製造2025を進めていくことを、改めて表明しました。欧米政府や財界関係者は、同計画が知的財産権の侵害など公正な競争を損なう恐れがあると懸念を示しています。

生産大国のみならず、生産強国への転換を目指し、西側諸国への再輸出のための「組み立て工場」体質から脱却し、先端技術すべてについての国産率を大きく引き上げ、本当の意味の国産製品を輸出することを目的とする中国製造2025は、西側諸国との関係に大きな影響を与え、特にアメリカとの関係が悪化し、米中貿易戦争に陥っています。

2018年7月に米国は、総額2,500億ドル分の中国製品に10-25%の関税をかけると言って脅し、中国製造2025の中止をあからさまに要求しました。一方の中国は、「我々にも成長する権利がある」と反論し、アメリカ製大豆の輸入を禁止するなどと対抗宣言をしました。

米中貿易戦争は長期化が予想されます。「中国製造2025の本質は、解放と協力である」と中国の蘇波氏(中国人民政治協商会議第13期経済委員会副主任、元工業情報化部副部長)の表明など、ハイレベルな通商協議が開催され、米中間の緊張状態を緩和するための交渉が続くと考えられますが、中国が中国製造2025を中止することはないでしょう。

今まで国営企業が市場の中心であった中国ですが、中国製造2025により、多額の補助金を手にした民間主体の先端技術企業、特にスタートアップもテリトリーを拡大することでしょう。

5. 「中国」での「製造2025ワード」によって今後どんな暮らし方になっていくのか(消費者側の変化)

今国を挙げての、ロボットによる自動化に急速にかじを切っている背景にあるのは、長年続いた「一人っ子政策」の影響で、労働力人口は、7年前から減少に転じていることです。こうした中、新たな働き手として注目されるようになったのが、ロボットです。

製造業やサービス業、そして物流などの分野で、急速にロボットの導入が進むことが予想されますので、国営企業の単純作業を担当する労働者には、大量失業がおきるかもしれません。一方でイノベーターの育成が進むので、粋なスタートアップが増加し、儲かる民間企業が増えると思います。スマートシティが本番稼働すれば、リモート勤務やワークシェアリングが進みそうです。

中国は消費のさらなる拡大に向け、各方面から消費の新モデル及び新業態の発展に取り組んでいます。その中でデジタルホーム、遠隔オーダーメイド、体験・共有などの新モデルによる情報消費の拡大が重点となります。スマートテレビ、スマート音響、スマートセキュリティなどの新型デジタルホーム製品が普及し、暮らしの中でのデジタル化は進み、それが新たな税源と多くの雇用機会を産むこととなります。

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