ドイツにおける「M2M」の歴史:2020年までに世界で3兆8,100億円の市場規模が見込まれる最新技術 – その①

ドイツにおける「M2M」の歴史:2020年までに世界で3兆8,100億円の市場規模が見込まれる最新技術 – その①

1. 「M2M」の言葉の意味・定義

M2M(Machine to Machine)とは、人の手を借りずに機器同士がネットワークで接続し、相互に情報交換をしてさまざまな制御を自動的に行う仕組みやコンセプトを指します。それは Internet of Things(IoT)という言葉が広まる前から、注目を集めていた技術でもあります。

M2M の適用範囲はとても広く、自動販売機やビルのエレベーターなどの機器管理、工場におけるファクトリーオートメーション、自動車などのテレマティクス、ホームオートメーションなどで、機器から情報を得る機器、機器を制御する機器という2つのパターンで運用されており、あらゆる機械設備を対象としています。

現在 M2M は、IoT に包括されていると定義されているため、機器同士の情報のやり取りから進化し、ネットワークに接続された機器とも、相互に情報を交換しあうという環境の構築が進んでいます。

M2M 市場では、まずセンシング技術が向上し、対応機器や端末の低価格化や普及したことを背景に、2010 年以降に普及しました。矢野経済研究所によれば、2020 年度の市場規模は、世界で 3 兆 8,100 億円に達すると予測されており、日本国内では 2,500 億円になると予想されています。

2. 「M2M」という「言葉」はいつ生まれたのか

IoT の概念と M2M の概念はとても類似し、今は M2M は IoT に属すると定義されています。しかしながら M2M のそもそもの概念は、IoT のそれとは決定的な違いがあります。それはM2M は機器同士で共有した情報を、インターネットやクラウドに送るといった通信機能を持っていない点です。

M2M という言葉を初めて使った人物は明らかではありません。そして M2M の前段階といえる技術は、世界中に点在していました。

M2M と類似する概念として、ユビキタスがあります。ゼロックス社のパロアルト研究所のマークワイザー博士が 1991 年に発表した「 21 世紀のユビキタスコンピューティング」では、コンピューターがまだ一般的にでない中で、目指すべきコンピューティングの未来が示されており、それは 21世紀の今でも示唆に富んでいます。

コンピューターが生活環境の一部に組み込まれることで初めてユビキタスが実現するはずだと、ワイザー博士は予想しました。

ユビキタスはあらゆるものがネットワークにつながる社会を指します。そして M2M はそれを実現するための基盤となる技術でありサービスであることから、M2M はユビキタスと同じ 1990 年台に生まれた言葉と推測されています。

アメリカではゼネラルモーターズ社が、1990 年代後半に自社の車載通信システムの OnStar で、最初に M2M 技術を使ったとされています。日本では建設機械のコマツ社が 1998 年に、M2M のシステムを、建設車両に搭載したことが有名です。

3. 「ドイツ」にて「M2M」の概念はいつからあったのか

ドイツでの M2M の概念は、いつから始まったのでしょうか?ドイツで M2M の元となった概念は、電話機から別の電話機への、電話番号の送信から始まったと言われます。

ドイツにおける M2M の草分けとなったのは、独シーメンス社です。同社は 1995 年にモバイルデバイスの GSM データモジュール “M1” 用に、独自のネットワークの使用し、M2M の商業的および工業的利用を開始しまし た。それは POS システムと車両追跡装置が、モジュールの最初のアプリケーション領域でした。

・ なぜその時に「M2M」は広まらなかったのか

1990 年代は多くの企業では、それまでのシステムの主流だったメインフレームから、抜本的な業務改革(業務プロセス改革)である、BPR (Business Process Re-Engineering) への変換期であり、ドイツも例外ではありませんでした。

そしてメインフレームから成るレガシーシステムから、独 SAP 社の R/3に代表される、企業経営の基本となるヒト・モノ・カネ・情報などの資源要素を適切に分配し有効活用する考え方である、ERP (Enterprise Resource Planning) のパッケージシステムへの移行のため、多くの IT 投資が行われたために、その先にある M2M の実装は広まりませんでした。

・ その時代背景・環境

IT 業界における 1990 年代のメインイベントは、インターネットの登場でした。インターネットにより、システムが低コストで相互に接続でき、企業や地域を越えた、大規模な業務の統合や調整が可能になるという世界が始まる、最初の第一歩でした。

しかしインターネットの利用は限られていました。企業の情報共有には LAN (Local Area Network) がまだ主流でした。そしてその時代のインターネットの身近な利用方法は、メールシステムや企業のウェブサイト構築などでした。インターネットやそれを利用するモバイルが爆発的に普及するのは、もう少し後のことです。

4. 「ドイツ」にていつごろから「M2M」という言葉が広まりはじめたのか

21 世紀に入る頃、インターネットやモバイルが爆発的に普及しました。そしてユビキタスに加え、人を介さず機器同士が相互に行う M2M も包含する、IoT の概念が登場したのです。

2010 年代では、M2M 導入率が伸びていきました。2013 年度調査ではわずか 12% だった成長率が、2014 年では 23% の成長率となりました。これは M2M が急速に伸長したことを表しています。

伸び悩んでいたドイツの M2M ですが、世界と歩調を合わせるかのように、2014 年以降急速に普及しました。

・ なぜ広まったのか、その背景は・環境はどうだったか

ドイツ政府が推進する、製造業のデジタル化・コンピューター化を目指すコンセプトであり、国家戦略的プロジェクトである IoT の普及のための、インダストリー 4.0 が 2011 年に発表されたことが、M2M のブレークポイントにもなりました。

アプリケーションの分野に応じて、様々な通信技術、すなわち、携帯電話、固定電話または W-LAN、Bluetooth、RFID および衛星ラジオが使用されるようになりました。そして後のコネクテッドカーを推進する自動車業界も、M2M の普及の牽引役となりました。

5. 「ドイツ」「M2M」におけるキーパーソンとその人の活動

慶應義塾大学の名誉博士でもある、アーヘン工科大学工作機械研究所 (IPT) のフリッツクロッケ教授 (Prof. Fritz Klocke) は、ドイツの製造業革命のキーパーソンの一人です。

彼は生産工学の分野で極めて顕著な功績を挙げ、若い研究者の育成にも力を注いできており、M2Mも包括する、IoT のドイツの国策であるインダストリー 4.0 にも関わっています。

工作機械の制御装置には、センサーを通じてたくさんのデータが集まってきますが、クロッケ教授は、これを利用してできるだけエネルギーをムダにせず、生産性やフレキシビリティーを高めようという研究を続けています。さらに彼の研究は、ロボットのインテグレーションである、IoRT (Internet of Robotics Things) にも、広がっています。

6. 「ドイツ」での「M2M」の今後の展望とまとめ

現在の M2M ソリューションはとても強力で、GPS などの統合テクノロジーをも備えています。今やクラウドサービスにおける、M2M は、ますます重要な役割を果たしています。

IDC の統計によると、2017 年に、2300 万の M2M モバイル接続が 4 億 2500 万ユーロの売上を生み出したことを示しています。

ドイツでは、調査対象企業のすでに 50% が M2M を使用しています。ヨーロッパでは平均 31% で、全世界では 27% です。これを見てもすでにドイツは M2M において、先進国といえるでしょう。

今後ドイツでは、IoT/M2M を推進するインダストリー 4.0 において、IoT/M2Mのみならず、人口知能(AI)、ディープラーニングそして産業ロボット技術に広がり、それら全てが今後重要な位置をしめることになり、さらにはまだ見ぬ新規技術に向かうのは、ごく自然なことです。

しかしながら、日本と並ぶ、「もの作り国家」のドイツでは、今後も M2M の概念は生き続けることでしょう。

次回予告

次回の記事は、ドイツで「M2M」導入事例に焦点を当て、ドイツにてM2Mによって今後どんな暮らし方になっていくのか、をお伝えして参ります。乞うご期待ください。

参考文献一覧

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