【IoT事例】Mercedes-Benz:生産をスマートに。Industry 4.0とネットワーク化された工場

IoT事例】Mercedes-Benz:生産をスマートに。Industry 4.0とネットワーク化された工場 – 記事

Mercedes-Benz(ベンツ)について

メルセデス・ベンツは、ドイツの自動車会社、ダイムラーが所有する乗用車、商用車のブランドです。1886年、ゴットリープ・ダイムラーとカール・ベンツがそれぞれ発明した二台の自動車により、人類のモータリゼーション(自動車の大衆化)の歴史が始まりました。1926年に二人の会社が合併して誕生した、ダイムラー社は世界最古の自動車会社であり、その哲学と卓越した技術力によって今もなお世界の自動車の指標であり続けています。日本では1933年にルード・ラーティンエン商館が販売を開始し、1986年にダイムラー・ベンツAGの100%子会社としてメルセデス・ベンツ日本株式会社を東京都港区に設立して以来、すべての顧客に多彩な車種と上質なライフスタイルを提供し続けています。

Industry4.0導入の背景

「自動車の製造」には以前よりIndustry4.0と同じような効率化・在庫削減の手段として、「ジャストインタイム方式」、いわゆる「カンバン方式」がありました。これはトヨタが最初に導入した製造効率化の方式で、製造を増やす・減らすの判断をサプライヤー側に逐一判断を委ね、余分な在庫を抱えない様にするものです。ドイツの自動車メーカー各社も1990年よりこの方式を導入しました。ベンツやポルシェが日本の自動車工場に視察に行った、という話も広く知れ渡っています。

カンバン方式がもたらした製造の効率化は、車種を絞って製造/販売する、というメーカーの戦略を変えさせるほどのものでした。

自動車業界ではIndustry4.0以前より「生産効率の向上」と「余分な部品在庫の削減」への取り組みはとても先進的なもの且つ常に追い求めているものであったと言えます。

時代とともに「デジタル化の波」は製品自体とその生産方法をさらに大きく変えていきました。メルセデスベンツでは、設計から製造、販売、サービスまで、自動車のバリューチェーン全体をネットワーク化しています。第4の産業革命はますます加速し、ベンツはこの波に乗ることで完全に接続された「スマートな工場」を作り上げました。さらに、製造工程だけではなく、顧客との折衝や歓談も情報としてネットワーク上に保存し、会社の仕事内容やニーズの把握に活用しています。

ソリューションと改善/効果

1. ベンツの目指すもの

メルセデス・ベンツでは、5つの主要な目標を元にスマートファクトリーの実現を目指しています。

  • 優れた柔軟性:スマートな工場は、世界市場の変動や変化する顧客の需要にさらに迅速に対応する生産を可能にします。デジタルプロダクションは、複雑化する製品の生産を簡単なものにします。
  • より高い効率:エネルギー、建物、材料ストックなどの資源の効率的な利用は市場での競争に大きく影響します。完全なデジタルプロセスチェーンは、常に一定の在庫管理を意味し、売上に直結する大きな要素と言えます。
  • より速いスピード:フレキシブルな生産プロセス、既存の生産施設の改善、新しい施設の導入は、よりシンプルで効率的な製造プロセスを可能とし、イノベーションサイクルの短縮化により、製品をより短期間で市場に投入することができます。
  • 魅力的な作業環境:人間と機械との間のアクティブなやりとりは、新しい操作インターフェースを使用することで、多くの場面で作業環境を激変させます(例:トレーニング環境や人間工学など) 。さらに新しい働き方の推進やライフスタイルのモデルケースを作成するときに新しい視点を加えることができます。
  • スマートロジスティクス:顧客の発注から、必要な部品およびその調達、生産、出荷までを一括してデータ管理します。「一度発注すれば、車が自動的に生産場所と機械を探す」と言われています。

2. 使用する技術/ソリューション

スマートファクトリーは、製品に関わるすべての人・モノとインターネットの完全なネットワーキングにより、実世界をデジタル世界に統合することができます。「デジタルツイン」は、リアルタイムで工場全体のプロセスとシステムをマッピングすることができます。これにより一連の生産が始まるよりずっと前に、技術的になにが実現可能なのか、どんなことが予測できるかなどが明らかになります。さらにメルセデス・ベンツは、完全にネットワーク化/自動化された生産を推進し、 次に上げる様な多くの先進的な技術を導入しています。

  • 3Dプリント/添加剤製造:ラピッドプロトタイピング(エンジンのための砂型鋳造用金型などに)、保護カバー(人/ロボット間のやり取りに必要な工具用などに)やツール(把持要素など)などに使用されています。
  • 機械学習(ML):機械が作業員の業務効率を引き上げます。AGVが通るべき経路は「デモンストレーション」によって学習させることができ、作業員がロボットに動作を教え、ロボットがそれを学んだ上で自動化を進めます。
  • 生産データのクラウド化:生産データを世界的に活用し製造に役立てます。例えば、コンパクトモデルの製造工場の「ラスタット(ドイツの工場)」は、会社のネットワーク上の他のすべての工場の生産データにアクセスし自身の生産のさらなる効率化に活用することができます。さらに、ドイツ国内に限らず「Kecskemét(ハンガリーの工場)」などにある工場で動作しているロボットでさえもこのデータにアクセスすることができます。
  • 顧客とネットワークで接続:デジタル化は、「工場内」には止まりません。製造環境を超えて、ベンツではネットワークを介して、特に流通において顧客の個別の希望に対応しています。ネット上の中心サービスである「Mercedes me」では、各種キャンペーンやイベント情報、試乗の予約から車検点検の問合せまで様々なことがネットで簡単に行うことができます。さらに、ベンツのポータルサイトの最新イノベーションの中には、「ライフスタイルコンフィグレータ」と言うものもあります。このサービスでは、スポーツ、食べ物、または生活の面での自分の好みを指定し設定することで、自分にあったベンツの車のモデルの提案を受けることができます。

製造関連動画

1. ギアボックスの組み立て

主に使用しているのは、KUKAの協働ロボットLBR iiwaです。ロボットに嵌合をさせるのは実は難しく、正確な位置決めができないと、うまく嵌らずにぶつかってしまいます。
しかし、KUKAの高性能ロボットは力覚センサーによって接触した時の力を感じ取ることができるため、明らかにうまくはまらない時は、無理をせずに方向を変えながら優しくねじ込んでいくことができるそうです。

2. 車体へのバッテリー組み付け

重いバッテリーを車体に組み付けていきます。AGVで運ばれてきたバッテリーユニットを、ロボットを操作し、所定の位置まで運んで組み付けます。

3. バーチャル組み立て

作業員教育のため、バーチャルで組み立て作業を体験できます。自分の動きがそのまま画面に再現されます。

4. 内装の取り付けを人とロボットで協働作業

作業員が所定の位置に内装材をセットすると、あとはロボットがビス止めなどの固定作業を行います。

現在の課題

Industry4.0による自動化を推し進めることで、人件費の削減を期待することができます。すなわち、人件費の高い国内でも、将来的にドイツが国として自動車産業を呼び戻す効果も期待できるのです。ただ実際のところ、現状各社は国外への投資を行ってしまっており、今すぐに再度国内への工場移転を進めることは難しいと考えられています。


ドイツ国内のデジタルテクノロジーが発達している企業が多く在籍する地域マップ。国内でも大きな差があり、同時に貧富の差にも関連し、国の問題に。

今後の展望

ダイムラーは2018年2月20日、メルセデス・ベンツのドイツ・ジンデルフィンゲン工場に、次世代の工場「ファクトリー56」を設置すると発表しました。ファクトリー56は、「デジタル」「フレキシブル」「グリーン」を重視し、工場で働く従業員に焦点を当てて建設されるものです。Industry4.0に沿う形でデジタル化されるだけでなく、グローバル生産ネットワークの他の工場とも接続されます。ファクトリー56は、2020年の稼働を目指す予定です。メルセデスベンツの上級車やEVの生産を開始していき、次期「Sクラス」や、電動化に特化した新ブランド「EQ」も含まれ自動運転タクシーも生産する計画をしています。また、ファクトリー56には、AI人工知能)やビッグデータ分析、予測的メンテナンスなどを導入し、生産計画や管理、品質保証において、高い効率性を追求していきます。

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