【IoT事例】Nobilia:カスタムキッチンの生産行程を自動化。全行程リアルタイムトラッキングで柔軟かつ効率的な生産を実現

IoT事例Nobilia:カスタムキッチンの生産行程を自動化。全行程リアルタイムトラッキングで柔軟かつ効率的な生産を実現

Nobiliaについて

Nobiliaは、ヨーロッパ最大のキッチンメーカーであり、ドイツのマーケットリーダーでもあります。最新のカスタムデザインキッチン、優れたブランド品質、他では見ることができない様々な独自の魅力的な価値を提供しています。ドイツのイースト・ウェストファーレンにある2つの製造工場では年間58万以上のキッチンが生産されています。

近年ではキッチンをはじめ、リビングやダイニング、ファニチャーなど、新しいライフスタイルを提案しており、スタイリッシュ且つモダンでクラシックに家全体のトータルコーディネートも行なっています。
2017年では約11億ユーロ(約1500億円)の売上があり、Industry4.0導入後、業績をあげている業界リーダーです。

Industry4.0導入の背景

Nobiliaのキッチンの最大の特徴は、顧客の要望に完全に沿った、カスタマイズされたデザインであることです。
一般的には手作り(手動により生産)されているこの製品(キッチン)を、Nobiliaはドイツでも人件費の最も高い地域で生産しており、生産性の競争力維持が課題でした。そのため、Nobiliaは1990年から全製造工程に対してインテリジェントな自動生産システムを導入し、部品および生産に関する全データの透明性と汎用性を確保しました。これは、現在のインダストリー4.0の理念に完全に沿ったものです。

上記の通り、Nobiliaでは従来より「Industry4.0」のハシリとも言える”概念”とインテリジェントな自動生産システムを開発しており、世界的に大きく評価されています。

この評価により、「Industrie 4.0 Platform」 が支持する最大のクラスター「It’s OWL(Intelligent Tech- nical Systems OstWestfalenLippe)」に採択され、ベッコフオートメーションが座長を務める二つの分科会「ScAut: Scientific Automation」および「efa: Extreme Fast Automation」へプロジェクトパートナーとして参画した実績もあります。

そんなNobiliaがIndustry4.0を取り入れるのはごくごく自然な流れと言えるでしょう。

ソリューションと改善/効果

1. Nobiliaの製造工程と仕組み

Nobiliaでは、生産を前工程と後工程に分けて行われています。各工程では、使用されているシステムやロボットが異なります。

◯ 前工程
後々利用する材料すべてを切り出す「工作機械」の消費電力とこの工程において無駄となってしまう材料を最小限にするための切り方を、リアルタイムにシュミレーションしながら工程を最適化します。また、切り出した部品ごとに異なるであろう組み立て用のダボ穴位置もすべてオラクルで動作するデータウェアハウスで管理しており、

  • 穴あけ加工の際の工作機械のドリルのスピンドルモータの電流値や電力
  • モータやワークの振動
  • 穴の形成過程と切りくずの形状や温度

など生産工程のあらゆるデータがデータベースに記録され部品品質向上のために活用されてます。

◯ 後工程
前工程にて加工された部品の中から、注文ごとに異なる必要な部品をERPとMESが自動的に選定し、個体識別用バーコードが貼り付けられます。この際に生産工程とERPが繋がり、各部品の個別認識が可能となります。
これはつまり、

  • 「どの部品が」
  • 「どの顧客から注文を受けた」
  • 「どんなデザインのキッチンの」
  • 「どこに収まる部品で」
  • 「どんなロボットで」
  • 「どんな形状に組み立てられて」
  • 「いつ」
  • 「どこに届けられる必要があるのか」

をすべて把握できるようになる、ということです。
これらの情報がすべて出揃うことで、ロボットによる自動組み立てが実現し、効率を向上させ、稼働率を向上させたり、不具合が発生した際に個別に原因究明が可能となります。

◯ その後…
Nobiliaでは、500台以上の輸送用トラックを所有しており、300人以上のドライバー社員が常に会社に在籍しています。日々すべてのトラックに完成済みの商品を積みこめるように、配送計画から逆算して後工程を計画し、四日間かけてキッチンが組み立てられます。ここでは、組立中の部品が四日間の制作期間の間に工場のどこにあるかをすべて把握できることが工程最適化のカギになっていると言います。

また、配送先にトラックが到着するまですべての部品やモジュールを常時トラッキングしているため、万が一運送中に商品の破損があった場合でも、トラックドライバーが所持している端末でバーコードを読み、破損記録を送信するとすぐに交換部品の生産が始まる仕組みになっています。
さらにこの工程をバーコードではなく、RFIDによる管理に切り替えることでRFIDリーダの密度に応じた分解能で部品の所在を把握し、更に工場内のバッファを減らすことを計画しているそうです。

この完全無欠な仕組みづくりにより、Nobiliaのサービスは高い品質を保ち続け、顧客からも高い支持を得ています。

2. 使われたIndustry4.0技術、具体的な製品

ベッコフオートメーションのWindowsベースのオートメーションソフトウェアTwinCATを導入。

◯ 上記技術の具体的な用途
工場は全行程にわたって、ベッコフオートメーションのソフトウェアPLC/NC(TwinCAT)が動作する540台のPCコントローラで自動制御しています。工場全体での1日当たりのデータトランザクション数は100万を超え、これをトランザクション当たり100ミリ秒程度の時間で処理するといいます。「Manufacturing by Wire」と呼ばれているこのノビリアの生産方式では全部品にいわばIoTデバイスのようにアイデンティティーを持たせており、まさにI4.0の先駆けとも言える生産システムです。工場全体で使用するエネルギーもリアルタイムにモニタリングができるため、生産性を維持しつつ省エネを実現する方策も各種施しています。

また、TwinCATの導入により、システム全体を司る単一の制御コントローラを置く方式も複数の装置にコントローラを分散させる方式も自由に選べるようになりました。
生産設備の規模を拡大する際にはモジュールを増設するため、トールキャビネットを組み立てるベルトや引き出し組み立てユニットなどのほんの僅かな変更点のみに注意を払うだけで済むようになりました。工程の種類ごとにテンプレート化されたTwinCATアプリケーションが用意されており、単純なパラメータを適合させていくだけでカスタマイズができます。これにより、各工程でのノウハウを最小限の労力で他の工程に移転することができ、ソフトウェアエンジニアリングの工数を大幅に効率化することが可能です。

TwinCATのさらなる利点として、工場のモジュール化の可能性に目を向けています。
サイドボードやベースボードを組み立てる装置や穿孔ユニットなどを個別の機能モジュールとしてモデル化し、これらのモジュールの立ち上げを別々に行い、後で単純に組み合わせることができます。その結果、ライン立ち上げ時間が大幅に短縮され、Nobilia社の生産設備を継続的に洗練させて行くことが可能になりました。

3. 導入による効果


製造は時間単位で管理されており、全工程はリアルタイムにトラッキングできます。トールキャビネット、ベースキャビネット、吊り戸棚などの構成部品がどの生産工程にあるか、それらの工程が適切に並列化されているかどうかを確認できます。
このようなリアルタイムデータの透明性によって、88種類の異なるキッチンの前面デザイン、各デザインに付随する250種類のオプションに対応することができます。

たとえば、引出し前面のバーコードには、幅や奥行といった引出し全体の構成、背面の壁の高さ、取っ手の種類などのデータが含まれています。それに応じて、製造現場ですべての必要な部品が供給され、適切な加工手順が開始され、要望通りの引出しが確実に「ジャストインシーケンス」で運搬カートに載せられます。運搬カートが組立て工程に引き出しを搬送し、そこで、完成済みのキャビネットの本体にその引出しのほか、開き戸などの構成部品が取り付けられます。

最終的に、すべての構成部品が合計9つの組立てラインから適切なタイミングで出荷工程に投入されるようにすることで、すべてのキャビネット、電気器具、付属品の取り付けが済んだ個々のキッチンのモジュールを適切なトラックに時間どおり完璧に積み込めるようになっています。

4. 経営状況の変化、その他変化


透明なデータフローとシステムインテグレーションにより、生産量が大幅に増加しました。また、部門やビジネスユニット間で情報をより深く統合することで、内部での協力とエンドツーエンドのカスタマーサービスが向上しました。

現在の成果

高度な状態監視や電源監視などのサイエンティフィックオートメーション機能の実装だけで、約20%の省エネと約10%の生産性向上を達成しました。その他、明らかな経済的メリットとして約50%のメンテナンス費用の削減を実現できることが期待されています。

今後の展望

Nobilia社はすでにインダストリー4.0の理念の大部分を実現していますが、短中期的にさらなる進展を目指す可能性を見据えています。現在使用しているバーコードシステムよりも、家具の構成部品の識別を多様化すると同時に、それらをすべての必要な情報と共により明確な形で提供することを目的として、RFIDとRTLS(リアルタイム位置情報システム)を試験的に利用しています。また、生産管理では、マルチコアCPUに対応したTwinCAT3と、マルチコアCPUを搭載したIPCの導入を進めることでコントローラの数を合理化していくことが期待されています。

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