【IoT用語集】膜型表面応力センサーとは?

【IoT用語集】膜型表面応力センサーとは? – 記事

はじめに

膜面表面応力センサー(英:Membrane type Surface stress Sensor、略称MSS)とは、香り・臭気をはかるセンサーでMMSと略して呼ばれることも多くなっています。2011年に開発された新しいセンサー・IoT端末であり、2015年から発足したMSSアライアンスという団体を中心に、改良研究の継続と応用が模索されています。

開発は日本人とスイスのノーベル賞学者のコラボレーション

多分野での実装に向けて期待がかかっている「次世代センサー」MSSは、国立研究開発法人材料・物質研究機構の吉川元起研究員と、ノーベル物理学賞学者であるハインリッヒ・ローラー氏及びスイス工科大学ローザンヌ校の共同開発によるものです。

特徴

化学物質には、固有の質量と応力があります。モノを動かしたときに、反動で出る力を応力といいますが、化学物質の固有の応力で、化学物質を特定できます。この特徴により、匂いのもととなる物質の特定ができますので、「人口嗅覚」と称されることがあります。

匂いを化学物質の分子レベルで特定、微量の検体からも化学物質の特定が可能です。匂いのセンサー・匂いの物差し、といわれることが頻繁ですが、匂いに限らず微量の液体からも、気体からも化学物質が特定可能な、高精度化学物質センサーということができます。DNAの解析さえも可能です。

ナノメカニカルセンサーからMSSへの進化

それまで匂いセンサーとして機能してきたのは、ナノメカニカルセンサーという、ガスクロマトグラフィーを利用したセンサーでした。しかし、精度・小型化が難しいこと・大量生産が難しいこと・ある程度量のある検体でないと精度が保てないことなど、課題が多くありました。
これに対して、膜面表面応力センサーは、

  • 化学物質を分子レベルで解析可能なこと
  • 大量生産が可能な材料であるシリコン製の膜で感応膜が作れること
  • 検体はわずかでも済むこと

といった従来のナノメカニカルセンサーがもっていた課題を克服したセンサーとして開発されました。
これは、膜型表面応力センサーが、応力を電気信号で表現することに成功していることに大きな要因があるとされます。ごくわずかの電気抵抗である「ピエゾ抵抗」を信号化し、応力を計測・表現する仕組みをもっているので、分子レベルのわずかな応力にも対応可能です。
また、電気信号で応力を測る仕組みは、大きな回路や気体を集める容器などを必要とせず、現在使われているMSSの大きさは、わずか数センチです。他のチップセットデバイスの大きさとそん色がありません。
ピエゾ抵抗を用いたセンサーとしては、膜型表面応力センサーの「前身」としてカンチレバーアレイ(片持ちの梁の意味)センサーがありました。が、精度においてもう一つ向上が必要になり、カンチレバーアレイ構造を改良することに成功、MSSが誕生することとなりました。
現在では、化学物質のリアルタイム識別が可能であり、感応膜を空気にかざすだけでもスマートフォンやタブレットに化学物質の解析結果を表示できるまでになっています。

MSSの用途

上記の特徴、技術的課題の克服から、利用が期待されている分野は次のようなものとなっています。

  • 医療
  • 犯罪捜査
  • セキュリティ
  • 食品安全・品質保持
  • 化粧品・香料
  • 環境保全
  • 危険個所(例:火山)でのガス観測

MSSの実証実験成功例

MSSは現時点において実用化一歩手前のプロジェクトが多くなっていますが、現在までに成功した実証実験例には次のようなものがあります。

  • がん患者と健康な人の呼気の比較から、がん患者を特定することに成功しています。
  • 匂いのリアルタイム識別をAndroidデバイスとつなげて行い、成功しています。
  • 化学物質からは従来違いが分かりにくかったスパイス・ハーブの匂いの識別にも成功しています。
  • 酒のアルコール度数を推定することに成功しています。
  • 機械学習(ディープラーニング)を組み合わせることにより、特定の匂いのベンチマーク推定に成功しています。

MSSの実装化をすすめる取り組み

MSSの実装化は、MSSアライアンスという団体を中心に進められています。同アライアンスは、国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)、大阪大学、京セラ株式会社、日本電気株式会社、住友精化株式会社、それとスイスのNew World AGの6機関が参加しています。

センサデバイス・解析技術・解析結果を格納し、分析するDB技術のそれぞれの要素に関して研究開発を行っています。要素に強い機関がそれぞれの役割で研究開発を行い、NIMSが結果を統合・コーディネートしています。
2017年4月からは、あらたに旭化成株式会社がメンバーに加わりました。同年11月から、7機関を中心に、MSSフォーラムが新たに発足し、公募実証実験事業を行っています。

まとめ

以上のとおり、MSSによりありとあらゆる化学物質の解析を小型のデバイスで行うことが可能になることから、実装化に向けて大きな期待がかかります。コストも消費電力も少なく、今後IoTデバイスとして、消費者が利用できるまでになる日も近いと考えられます。

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