【IoT用語集】CANとは?

はじめに

コントローラエリアネットワーク(Controller Area Network)=CANのことをいいます。CANは車載用通信の国際標準規格で、ネットワークデバイスのシリアルバスです。

1983年に、自動車部品メーカーのBoschにより開発され、それまでの複数ワイヤによる通信構成方法を置き換えホストコンピューターなしに車載デバイス相互間の通信を可能にすることを目的としていました。

CANは、1986年のデトロイトのSAE(Society of Automotive Engineer) で公式にリリースされ、欧州を中心に車載用通信プロトコルとして標準化する動きが発展しました。

その後、2000年にはSAEで世界標準として認定され2008年にはアメリカで製造される車のすべてにCANの登載が求められることとなりました。

車載ネットワークの標準プロトコルとして現在に至るまで利用されています。車載用の通信アプリケーションのうち、もっとも多くのアプリケーションがCANを通信プロトコルとして採用するものとなっています。

CANによって克服された技術的課題

自動車を構成する部品は、それぞれがバラバラに関連性なく制御されることになると事故や故障のような非常事態に適切に機能を止めることやパワーを落とすといった制御もまたバラバラに行われ、不適切な結果を引き起こします。

こうした課題を克服するために、まずは複数ワイヤ構成による車載用通信が開発されたという経緯があります。

しかし、各デバイスのアナログ/デジタルの相互変換を複数ワイヤ形式で行うと各デバイス相互の通信をさらにほかのデバイスに伝えるのに時間がかかり、デバイスの製造コストも高くなるという欠点がありました。これらの課題を克服したのがCANでした。

CANの特徴

① 単線構造
CANは、各デバイスがCANに対応しているものであるとすると車載電子制御装置(ECU, Electric Control Unit)にCANインターフェースを1台搭載するだけで、各車載デバイスに対して電気信号を伝送することができるようになります。

複線ワイヤ構造を持たずに機器間の通信を可能にするところが、CANの革新性の本質でした。

② 優位・劣位の調停機能
単線構造から、各デバイスのバス間に衝突が起こってもECUによって優先順位の調停が行えるようになります。電気信号にドミナント(優位)・レセッシブ(劣位)の優先順位が付いてデバイスに伝達されるよう、ECUが判断・伝達速度の制御を行います。

③ 複線バス構造やデータフレームによる高い信頼性
CANのネットワークそのものは単線構造ですが、バスそのものはバックアップと検証の必要性から複線構造をとります。また、CAN「データフレーム」はデータオーバーフロー・エラーといったイベントを適切に訂正します。

④ 高スピード・低コスト
さらに、CANは伝送速度も1Mbit/sですから車載デバイスから発せられる情報を伝送するのに十分なスピード・容量があります。このことは、開発コストの低廉化にもつながりました。

⑤ 高いノイズ耐性
そのうえ、バスレベルでの電気抵抗が低いことからノイズにも強いことが知られています。これらの特徴からCANは車載ネットワークプロトコルの標準となっていきました。

CANの国際標準規格化

1993年、国際標準化機構(ISO)はCAN規格ISO 11898を発表しました。この規格は後に、データリンク層を規定するISO 11898-1と高速CAN用の物理層を規定するISO 11898-2の2部に再構成されることになります。

さらに後に、低速フォールトトレラントCAN物理層を規定するISO 11898-3が発表されました。現在BOSCH社の発表しているCAN2.0は物理層以外の規格を仕様の一部としています。

現行バージョンであるCAN2.0の特許権者であるBOSCHも仕様を公開しており、ISOでCAN規格を販売していることと併せて、CANは後続の技術開発に対してオープンな状態にあります。

CANの自動車における用途

CANは制御系のプロトコルですが、ボディ伝送系の部品と、狭義の制御系の部品に多く利用されています。ボディ電装系は、ボディ電装部品周りの機器です。

代表例はパワーウィンドウやドアロック、バックミラー、イグニッション、ライトなどです。狭義の制御系とは、自動車の基本機能制御をつかさどる部品です。代表例は、エンジン、トランスミッション、ステアリング、ブレーキ周りです。

CANの応用例-鉄道・産業機械・医療の世界へ

CANは主に上位層・下位層の他の通信プロトコルとも連携することにより、車載用以外の通信技術としても利用されています。

たとえば、満員電車のドアがX両目で閉まらないという場合に、他の車両にその異変を知らせ発車が見合わせられるように自動的に制御される通信技術はCANによるものです。

まとめ

上述のように優れた通信プロトコルであるCANの登場後、車載用ネットワークの世界もさらに進化しています。

CANより低コストで車載用の通信を実現する通信プロトコル(代表例 Lin)、大量コンテンツの転送により、カーナビなどの技術を進化させ車の外の世界との連携をおこなう通信プロトコル(代表例FlexRay、MOST)により、CANは補完されるようになってきています。

これは、スマートシティにおける自動運転システムの開発やより快適な車の空間を実現する通信技術を低コストで実現しようとする市場の志向に合致しているものでが、CANに代わるものとして他のプロトコルが登場し標準化の動きが出ているものではありません。

次世代モビリティにおけるネットワークで他のプロトコルに補完されながらもCANは中心的役割を果たす見込みです。